【両国はライバル同士に!】韓国と日本のイチゴ生産および輸出動向の特徴5選【2023年版】

韓国イチゴ育苗風景 野菜채소
韓国イチゴ育苗風景(収穫株をそのまま利用し、自動遮光装置・換気扇を組合せている)

イチゴは、日韓両国ともに重要な果菜類ですが、その理由は以下の2つがあります。

  • 食べやすいので老若男女を問わず好むことや、ケーキ用などの業務需要も多いこと
  • 単価が高くて安定しているため、適切に栽培すれば農業者に安定した所得をもたらしやすい

また、日韓両国ともに、イチゴ栽培の主流はハウス促成栽培なので、収穫時期や栽培方法も類似しています。

でも、日本のイチゴ農家・関係者のみなさまにとっては、隣国である韓国のイチゴの現状がどうかあまり知られていません。

そこで、このページでは、韓国と日本の最新統計をもとに、両国のイチゴ生産や輸出の概況を整理し、共通点や違いを考えてみました。6つのグラフを準備し、日韓両国のイチゴ事情が直感的に分かるようにしています。

イチゴ栽培や輸出の動向を通じても、韓国農業の現状をより深く知ることができます。

  • 韓国のイチゴ栽培面積は、21年現在で日本の120%程度と多い
  • 韓国のイチゴ生産量は、年次変動は大きいものの、日本より多い
  • 韓国のイチゴ単収は、年による乱高下があるが、ここ2年はやや低迷
  • 韓国のイチゴ輸出量は、近年の日本の輸出の伸びに伴って差が縮小傾向
  • 韓国のイチゴ輸出単価は、この7年で60%程度上昇しており、日本との単価差も縮小傾向

日韓両国のイチゴ栽培実績(面積、生産量、単収)から見た課題

栽培面積の動向

2013年~2021年のイチゴの栽培面積を見ると、韓国の方が日本より栽培面積が多いことが分かります。

両国とも高齢化等で栽培面積は減少傾向ですが、減り方が日本と韓国でかなり違っています。

  • 日本の栽培面積は、この9年で約650ha減少し、毎年減少しているが減少幅は少ない
  • 韓国の栽培面積は、例えば2014年→2016年の2年で約1,000ha減少するなど、日本より減少幅が急。また、2016年→2019年には約500ha増加するなど増えることもあった

生産量の変化

栽培面積でカバーしていることもあり、韓国のイチゴ生産量は一貫して日本より多いです。ただし、ここ2年では、両国の生産量はあまり変わらない水準になっています。以上を細かく見ると、以下の特徴が分かります。

  • 日本の生産量は、この9年で栽培面積が10%程度減ったのに、ほぼ一定である
  • 韓国のイチゴ生産量は、面積に引きずられている点が多いものの、乱高下が激しい。要因は不明であるが、20~21生産年度は17万トン程度と、過去7年の平均値より3万トン程度落ち込んだ

単収(面積当たり収量)の動向

  • 韓国のイチゴ単収は、13~19生産年度までは日本と同等かそれ以上を誇っていました。しかし、20~21生産年度の単収は日本より低くなっています。また、面積や生産量と同じく、年次間の差も大きいです。
  • 日本のイチゴ単収は、13~21生産年度の9年間で、単収が15%向上しています。

※生産年度:イチゴの場合は、10月から翌年9月まで。例えば、「22生産年度」の場合、2022年10月~2023年9月までです。なお、イチゴ促成作型の収穫時期は、11月~翌年5月までが一般的です。

日韓両国のイチゴ輸出動向(輸出量、輸出額、輸出単価)から見た課題

輸出量の推移

  • 韓国のイチゴ輸出量は、この5年間は5,000トン規模を維持しています。なお、21~22年は、生産量や単収に影響されたせいか、4500トン規模とやや減少しました。
  • 日本のイチゴ輸出量は、17年→21年を比べると、約900トン→1,800トンと倍増しているものの、韓国の数分の1レベルです。

輸出額の推移

輸出量に引きずられている面もあり、輸出金額も韓国の方が日本より多いです。

17年と21年を比較すると、日韓両国とも順調に輸出金額が伸びています。伸び幅は、韓国で約150%、日本で約200%となっており、両国の輸出金額の差は徐々に縮小しています。

輸出単価の推移

  • 韓国の輸出単価(10ウォン=1円で計算)は、17年ではkg当たり973円と、日本の半値以下でした。しかし、21年ではkg当たり1602円と、17年に比べると60%以上の高単価でした。単価差は縮小しつつあるものの、依然として日本の単価の70%程度と安価です。
  • 日本の輸出単価は非常に高価で、17年ではkg当たり2025円、21年ではkg当たり2286円でした。ただし、単価の伸び率は10%程度と、韓国より緩やかです。

※輸出関係における「年」は、暦年(1/1~12/31)であり、生産年度ではないので注意が必要です。

まとめと補足

まとめ

  • 韓国のイチゴ栽培面積は、21年現在で日本の120%程度と多い
  • 韓国のイチゴ生産量は、年次変動は大きいものの、日本より多い
  • 韓国のイチゴ単収は、年による乱高下があるが、ここ2年はやや低迷
  • 韓国のイチゴ輸出量は、近年の日本の輸出の伸びに伴って差が縮小傾向
  • 韓国のイチゴ輸出単価は、この7年で60%程度上昇しており、日本との単価差も縮小傾向

補足

韓国イチゴの生産面積や単収などの乱高下について考えられるのは、少数の産地が寡占しているため、気象災害等である産地の実績が悪いと韓国全体の数値に影響を及ぼすためと思われます。

また、20~21生産年度の単収の落ち込みの原因はよくわかりませんが、20年2月ころから韓国でも流行し始めた新型コロナウィルスの影響があるかもしれません。

さらに、近年の輸出単価の伸びは、主な輸出先である香港や東南アジア諸国の所得向上、韓国の輸送技術向上果重が非常に大きいなど特色ある品種の重点的投入(下動画参照)の3点が考えられます。

これらの疑問点は、今後も解明を進めていくつもりです

聯合ニュース制作(2021.12.18公開)【卵より大きな品種「アリヒャン」イチゴ・・・一粒5選ウォンでも輸出人気(달걀보다 큰 ‘아리향’ 딸기…한 알 5천원에도 수출 인기) 】

参考資料

日本のイチゴ栽培面積・収穫量・輸出量・輸出金額:「果物ナビ」イチゴの産地 栽培面積 収穫量(23.05.09閲覧)

韓国のイチゴ栽培面積および収穫量:忠清南道農業技術院「忠南 主要作物栽培現況 イチゴ」(23.05.09閲覧)

韓国のイチゴ輸出量および輸出金額:大韓民国農村振興庁HP「ノンサロ 品目別輸出情報 イチゴ」(23.05.09閲覧)

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