【韓国は凋落傾向】韓国と日本の施設キュウリ経営指標・労働生産性の特徴5選を大紹介【日本は追い上げ】

ハウス内でキュウリを栽培している風景です 野菜채소
ハウス内のキュウリ栽培例

キュウリは、夏の暑い中で体にたまった熱を取ってくれる働きがあります

このため、キムチや柴漬け等の漬物類やサラダに欠かせず、日韓ともに重要な果菜類になっています。

当然、日韓両国とも政府が重要な野菜とみなしており、生産状況だけでなく、キュウリ農家の経営状況まで毎年把握しているのです。

でも、個別の農家単位で見て、施設キュウリ(要はハウスで栽培するキュウリ)の収益を日本と韓国で比較した資料はありません。

そこで、このページでは、韓国と日本の最新統計をもとに、両国の単位面積当たり施設キュウリの収量・単価・経営費・所得・労働時間の概況を整理してみました。4つのグラフと2つの表を準備し、日韓両国のホウレンソウ経営が直感的に分かるようにしています。

また、日韓のキュウリ栽培の違いを生み出している2つの要因である、収穫サイズや品種群についても解説しました。

韓国のキュウリ栽培・経営の現状を知りたい方は特におすすめです。

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  1. 韓国のキュウリ単価は日本の60%程度と非常に安価である
  2. 経営費も日本の60%と安価であったものの、年々その差が縮小している
  3. 所得や労働生産性は韓国の方が高いものの、近年、韓国の指標は悪化している
  4. 韓国のキュウリは、日本のキュウリより収穫サイズが大きく、120~160gで収穫されているので、収穫に要する労働時間が日本より短い可能性が高い
  5. 韓国のキュウリの収穫サイズが大きい理由は、市場や消費者の好みもあるが、主な品種群が4つに分けられているため、栽培基準の統一が難しいのも要因である

日韓両国の施設キュウリ経営指標の比較(1)収量・単価・粗収益

韓国の指標は促成作型と抑制作型の合計値日本の指標は様々な作型が混在する調査対象農家の平均値を記しています。

両者ともに「一年のほとんどをハウスにキュウリを植えている」という仮定に近づけるためです。

収量

  • 韓国の方が収量が高いが計算方法が異なるので一概に比較はできません。
  • ただし、収量の変動係数は日韓とも3%程度と著しく低く、気象条件等の影響を受けずに安定している点では共通しています。

単価

  • 韓国の単価は安く、日本の60%程度です。
  • 韓国の単価は年々上昇しているのに対し、日本では一定の傾向がありません。

粗収益

  • 韓国は収量が高い仮定ですが、単価が非常に低いため、粗収益は日本の80%程度です。

日韓両国の施設キュウリ経営指標の比較(2)経営費・所得

経営費

  • 韓国の経営費は安く、日本の60%程度です。
  • 韓国の経営費は年々上昇しているのに対し、日本ではほぼ一定しています。

所得

  • 韓国の所得が3年間ほぼ変わっていないのに対し、日本は年々上昇しています。

日韓両国の施設キュウリ労働生産性の比較

韓国の単位面積当たり労働時間

  • 韓国の施設キュウリにかかる労働時間は、年々少しずつ増加しています。
  • 増えている労働時間は自家労働のほか、雇用労力でも補っています。

日本の単位面積当たり労働時間

  • 日本の施設キュウリにかかる労働時間は、年々少しずつですが減少しています。
  • 家族労働時間はほとんど変わらないため、もっぱら雇用労働時間の減少が全体の労働時間を引き下げています。

両国の労働時間比較

  • 2019年の時点では韓国の方が労働時間は低く日本の65%でしたが、2021年には80%にまで増えています。
  • 日本は全労働時間の35%程度が雇用労働によりまかわれていますが、韓国では20%程度と低めです。

施設キュウリ栽培における自家労働1時間当たり所得比較

  • 2019年の自家労働1時間当たり所得を見ると、韓国は日本の2倍程度ありました。
  • しかし、その後は差が縮小し、2021年には韓国が1.2倍高いくらいです。

施設キュウリ栽培における労働1時間当たり収穫量比較

  • 労働1時間当たり収穫量は、19~21年を通じて、韓国が日本より高く推移しています。
  • しかし、韓国の場合は、この3年で単位労働時間当たり収穫量が20%落ちています。
  • 対して、日本の場合、この3年で単位労働時間当たり収穫量が10%上昇しており、日韓両国の差が縮小しています。

分析と補足

日韓の労働時間が違うのは収穫頻度が大きい

キュウリは100gで収穫するとすれば、ほぼ毎日収穫を継続しなければなりません。

日本の場合、キュウリにかかる労働時間の60%近くが「収穫・調整」に費やされているのは、引用資料からも分かります。

一方、韓国の場合はどうでしょうか。

全体の労働時間は分かっても、作業ごとの労働時間を示した資料が見つかりませんでした。

しかし、収穫の実態を間接的に示した資料ならばあります。それが、韓国農村振興庁が出している標準技術書である「農業技術道しるべ(농업기술길잡이)」です。収穫を示した一節を引用します。

収穫果の大きさは品種や用途により異なるが、通常の生果用は重さ120~160g内外、・長さ20~25cmである。日本の白芯系キュウリの場合、長さ20cm・重さ100g程度と若干小さい物が選好されるが、わが国はこれより若干大きい物が選好される傾向にある。(中略)

可能であれば一日に一回ずつ適切な大きさのキュウリを収穫するのが草勢維持によく、品質も優れる。(中略)

収穫作業に労力が多くかかる欠点はあるが、一日に1箱を収穫するといえど適期に収穫をすることにより養分の転流と分配にリズムが生じて素直な生育になる。適期収穫をすることは収量増加を助ける。果実を大きくして収穫すれば初期収量は多くなるが、果実の負担が大きく、茎伸長および側枝の発生が悪化し、結局は収穫果数が少なくなる。
農村振興庁(2021)「農業技術道しるべ107 キュウリ」P114~115

以上のことから、以下のことが言えそうです。

  • 韓国では日本よりキュウリの収穫サイズが50グラム程度大きい
  • 収穫サイズが大きい理由は、韓国の市場・消費者がサイズが大ぶりなキュウリを選好している面もある。
  • 総収量や草勢管理が優れるため、技術的には一日一回の収穫が推奨されるが、実態は必ずしも志うでなく、2日に1回というのもありうる
  • 以上のことから、韓国のキュウリ収穫時間は日本の半分程度になっていると思われる

韓国のキュウリ品種の種類について補足

韓国のキュウリは、以上のように収穫サイズが定まっていない傾向がみられます。

では、その遠因は何でしょうか? 

それは、韓国では複数の品種群がそれなりの地位を占めているためです。

以下、主な品種群を紹介しておきます(韓国農村振興庁「作物技術情報・キュウリの品種選択(작목기술정보・오이 – 품종선택)」より引用)。

吹青きゅうり취청오이(落合系낙합계)

南部地方で主に冬場に施設栽培されるキュウリで、果実色は青緑色、果実の大きさは25~30cmである。多くは低温伸張性が強いが、高温期の栽培には適していない。

タダギきゅうり다다기오이(半白系반백계)

中部地方で主に栽培される品種であり、雌花着生が良い節なり性であるが、吹青キュウリより低温に耐える力が多少弱い。しかし高温に耐える力は強い方で、春・秋栽培に適合する。果実は肩部分が緑色を呈するが、果実の中間部分からは白色ないし薄い緑色を呈する半白色である。果実の大きさは20~23cm程度である。

カシきゅうり가시오이(黒真珠系흑진주계、四葉系사엽계)

慶尚南道で春から夏にかけて栽培されるキュウリであり、果実の表面にしわが多く凹凸が目立ちイボも多い。果長は30~35cmと長果である。これらの品種は、暑さに耐える力が強いが、低温には弱い。雌花着生率は品種により異なり、黒真珠系は75%、四葉系は40%程度である。

青風キュウリ청풍오이(白芯系백침계)

果実色は濃緑色で、果実表面のイボはごく少なくて平滑であり、ブルームがなく光沢がある。イボの色が白色なので白芯系と呼ばれる。江原道の一部地域および内陸山間地域で夏期に栽培されているが、日本で栽培される白芯系キュウリとは根本的に差異がある。白芯系キュウリは、吹青キュウリより低温伸張性が弱く、低温期の栽培では暖房費が多くかかる。また、側枝収穫型品種であるため、栽培法が吹青キュウリや半白系キュウリとは異なるので、より細心の注意を払って管理する必要がある。

日本の場合:雑種系

これに対して、日本ではほぼ1つの品種群である「短型白いぼ品種:ブルームレス系」に統一されています。

ブルームがないところは青風キュウリ似で、低温伸張性があるところは吹青キュウリに似て、高温に強い部分はタダギ・・・といった具合に、日本ではキュウリの品種群同士の混血が進み区分ができなくなっているのです。

なので、日本では収穫サイズもすべて約100gで統一されているのです。

参考資料

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