【韓国は少数精鋭】日韓の大学農業系学部入学者数の推移から技術の動向を整理して分かったこと4選【日本は人数充実】

日韓の大学における農学部の位置づけ 技術一般기술일반

ある国の大学入学者数が分かれば、その国がどれだけ教育に力を入れているかが分かります。

これはその国の各産業レベルでもまったく同じであり、農業系大学・学部の学生がどれくらいいるかで、農業研究や現地支援がいかに充実しうるかを推測することができます。

しかし、日韓両国の大学、特に農業系学部の入学者数について、同じ方法で整理して示したものはほとんどありません。また、農業系学部の入学定員の推移も明らかではないうえ、入学者の男女比も比較できるものがない状況です。

そこで、このページでは、2022年の両国の大学および大学院入学者数をもとに、日韓両国の農業系学部がどのような位置づけであるか整理して、直感的に分かるように表で示しました。

また、入学定員の推移やその男女比も整理し、農業系の大学教育がどのように変遷してきたかも整理しました。

  1. 韓国は、農業系学部の入学者は日本の25%程度であるが、大学院は日本と同程度の進学者があり、両国の農地面積や農家数を考えると、韓国の方が農業研究者人口は多い。
  2. 日本は、大学院進学者は少ないが、農業系学部の入学者が多いので、中堅の技術者のボリュームは韓国より厚い。
  3. 韓国では、2010年の農業系学科入学者数の男女比は7:3程度であったが、年々縮小して2022年にはほぼ1:1になっている。
  4. 韓国は、わずか10年で男女比が同等になったが、日本は男女比が同等になるまでに30年程度かかった。

日韓両国の大学・大学院教育に占める農業系分野の位置づけ

日韓両国の農業系学部の位置づけ

  • 2022年の韓国では、大学入学者が38.1万人であったのに対し、農業系(農学、水産学、山林園芸学、動物獣医学)の学科に入学した学生は4500人程度であり、大学入学者全体の1.2%であった。
  • 一方、同年の日本では、大学入学者が64.5万人であったのに対し、農業系(農学、農芸化学、農業経済学、農業工学、林学、獣医学畜産学、水産学、その他)の学科に入学した学生は18900人程度であり、大学入学者全体の2.9%であった。
  • 学科の区分けが両国では異なるものの、日本の農業系の学科の入学者数は韓国の4倍になる。

日韓両国の大学院教育の位置づけ

  • 2022年の韓国では、大学院入学者が15.3万人であったのに対し、農業系(農学、水産学、山林園芸学、動物獣医学)の大学院に入学した学生は3900人程度であり、大学院入学者全体の2.5%であった。
  • 一方、同年の日本では、大学院入学者が3.8万人であったのに対し、農業系(農学、農芸化学、農業経済学、農業工学、林学、獣医学畜産学、水産学、その他)の学科に入学した学生は4400人程度であり、大学入学者全体の11.6%であった。
  • 学科の区分けが両国では異なるものの、韓国と日本の農業系大学院の進学者数は、ほぼ同じ水準である。

日韓両国の大学農学系教育人員のまとめ

  • 韓国は、農業系学科の入学者は日本の25%程度であるが、大学院は日本と同程度の進学者があり、両国の農地面積や農家数を考えると、韓国の方が農業研究者人口は多いと考えられる。
  • 日本は、大学院進学者は少ないが、農業系学科の入学者が多いので、中堅の技術者のボリュームは日本が韓国より厚いと考えられる。

日韓両国の大学農業系学部の推移

日韓両国の入学者数の推移(日本1990~、韓国2010~)

  • 韓国は、この10年での農業系学科の入学者数は、5000人程度と一定である。
  • 日本は、この30年で農業系学科の入学者数は2000人増加している。

日韓両国の入学者数の男女比の推移

  • 韓国では、2010年の農業系学科入学者数の男女比は7:3程度であったが、年々縮小して2022年にはほぼ1:1になっている。
  • 日本では、1990年の農業系学科入学者数の男女比は3:1程度であったが、徐々に縮小して2022年にはほぼ1:1になっている。
  • 韓国は、わずか10年で男女比が同等になったが、日本は男女比が同等になるまでに30年程度かかったことになる。

補足

日本では、農学部の中に、農学、農芸化学、農業経済学、農業工学、林学、獣医学畜産学、水産学などの様々な学科が入っています。

しかし、韓国では、今回利用した統計の上では、「自然系列学部」の一環として「農学」分野があり、その「農学」分野には農学、水産学、山林園芸学科しかありません。自然系列学部には、別に「生物・化学・環境」分野に、獣医動物学科があります。

韓国の場合は、今回は集計の対象とはしませんでしたが、「生物・化学・環境」分野に、「生命科学」学科があります。これは、日本でいうと、理学部の遺伝子関係部門+農学部の遺伝子関係部門+農芸化学が含まれています。「生命科学」は、毎年8000名程度の入学者がおり、これも含めると少し解釈が異なる可能性があります

日本の農芸化学科の2022年入学者数は2600名程度ですので、もしかすると、韓国は農芸化学専攻者のボリュームが日本よりはるかに厚いのかもしれません。

なお、韓国大学農学部(大学院含む)卒業生で最も優秀な方々は、例えば農村振興庁(↓下リンク参照)のようなところに就職しています。

【韓国の農業技術が分かる】2022年韓国農村振興庁農業技術大賞5選のまとめ【韓国政府の農業政策も分かる】
2022年に選定された5点の農業科学技術表彰大賞を受賞した5つの研究についてのまとめ記事です。大賞を受けた技術の内容や背景の共通点を把握することで、韓国政府が力点を置きたい農業政策が理解できるほか、韓国の農業事情も理解できます。

参考資料

韓国教育開発院「教育統計サービス」より「2022、2020、2015、2010大学課程系列別概況」および「2022大学院課程系列別概況」を閲覧(2023.5.20)

文部科学省「学校基本調査」より「関係学科別学生数(令和4、令和2、平成27、平成22、平成17、平成12、平成7、平成2)」および「専攻分野別大学院入学状況(令和4)」を閲覧(2023.5.20)

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