【韓国は隠れた農業用ハウス大国】日韓両国の農業用ハウス設置状況を整理して分かったこと4選【最新2020年統計反映】

ビニールハウスの群れ 機械・資材기자재
延々と続く韓国のビニルハウス群(2017.08、星州郡)

ある地域がどれくらいの農業用ハウスがあるかが分かれば、その地域の農業のおおよその構造が分かります。

これは国レベルでもまったく同じことが言え、農業用ハウスの在り方は、その国の農業の構造を示す重要な指標になります。

しかし、日韓両国の農業用ハウスの面積や所有農家数の推移について、同じ方法で整理して示したものはほとんどありません。また、全農地面積、全農家数に占める割合も明らかではないうえ、農業用ハウスの装備の程度も比較できるものがない状況です。

そこで、このページでは、2020年に両国で実施された調査結果をもとに、日韓両国の農業用ハウスの面積や所有農家数の推移について整理して、直感的に分かるようにグラフで示しました。

また、全農地面積、全農家数に占める割合や、複合環境制御を装備している施設の比率も整理し、両国の農業用ハウスがどのような位置づけであるかも整理しました。

  1. 韓国の農業用ハウスは、総面積、1戸当たり面積とも、日本を上回っている。
  2. 韓国の農業用ハウスを所有する農家数は日本と同様だが、総農家数に占める割合を見ると全農家の24%(4戸に1戸程度)がハウスを所有しており、日本より農業用ハウスが普及している。
  3. 韓国の全農地に占める農業用ハウス面積の割合は2.7%に達し、日本の0.8%に比べて高い。
  4. 韓国では、「複合環境制御」が導入されたハウスの割合が日本より高く、ハウスの高度化が進んでいる。

日韓両国の農業用ハウス総面積の推移

  • ハウス面積は、韓国の方が日本より20%程度多いものの、大差はありません。
  • 日韓両国とも、2015年から面積が減少し始めており、類似した傾向です。

日韓両国の農業用ハウスを所有する農家数の推移

  • 2000年と2020年の日韓両国のハウス所有農家数を比べると、両国ともこの20年で半分程度に減少しています。
  • 細かく見ると、韓国の場合は、2000年からの10年間でハウス所有する農家が急減し、以降はほぼ横ばい~微増で推移しています。
  • 日本の場合は、2000年から2020年までの減少幅はほぼ同様で推移しています。

日韓両国の1戸当たり農業用ハウス面積の推移

  • 2000年の日韓両国の1戸当たり農業用ハウス面積を見ると、両国とも2000㎡程度と大差はありませんでした。
  • しかし、2010年には、韓国でハウス面積が変わらなかった割には所有農家数が減少したため、日本の2倍以上の4300㎡まで増加しました。
  • その後、2020年には、韓国のハウス面積はやや減少し、3400㎡になったものの、依然として日本の1.5倍程度を所有していることになります。
  • 日本の場合、2000年の2000㎡→2020年の2300㎡と、1戸当たりのハウス面積はほとんど変わっていません

日韓両国のハウス農業の位置づけについて

全農地面積に占める比率

  • 全農地面積に占める割合を見ると、日本の0.8%に比べ、韓国は2.7%がハウスで占められています。
  • 下のリンクでお分かりのとおり、韓国は農地面積が狭いため、栽培環境を人為的に制御しやすいハウスを使用することで面積の狭さをカバーしていると考えられます。
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全農家数に占める比率

  • 全農家数に占める割合(下リンク参照)を見ると、日本の13.6%に比べ、韓国は23.8%となっており、韓国の方がハウスを導入している農家の割合が多い状況です。
【韓国は小規模多】日韓両国の経営規模別および販売額別農家数を整理して分かったこと4選【日本は農家数減少激しい】2023年版
日韓両国の経営面積や販売額別の農家数について、直感的に分かるようにグラフで示しました。5年前の販売額別農家数についても整理し、両国の農業がどう変化しているかも整理しました。

複合環境制御施設の比率

  • 複合環境制御ができる施設の割合は、韓国が13.1%に対し、日本は3.5%と3倍以上の開きがあります。
  • よって、韓国のハウスは、日本より数量で優勢なのに加え、ハウスの装備も高度化していると言えます。

※韓国では、「複合環境制御施設」と表記されていますが、日本では「高度環境制御装置があるもの」を集計しています。日本での「高度環境制御装置」の定義は、「日射量や温度、湿度、炭酸ガス等の複数のセンサーで計測された情報を基に、暖房機や天窓、カーテン、循環扇等複数の機器を組み合わせて環境制御を行うことができる装置」とされているため、韓国の「複合環境制御施設」とほぼ同義であると言えます。

補足

韓国で、2010年まではハウス面積が変わらず、その後の10年で急減した理由は今後も調査していきたいと思います。

ただし、2010年の時点でハウスを手放した農家からもらったものの、やはり管理しきれなくなって条件の悪いハウスを処分したなどの事情があるかもしれません。

個人的な見解ですが、韓国人はどちらかというと質より量に重きを置く国民性があるように感じていました。でも、こと韓国の農業用ハウスに限っては、条件の良いハウスに複合環境制御装置を導入して収量増を図った方が効率的という考え方がここ10年で浸透しているのかもしれません。

参考資料

大韓民国統計庁「農林漁業総調査」施設面積規模別農家および施設面積(2000、2005、2010、2015、2020年)

総務省統計局「2020年農林業センサス」2-10表(複合環境制御施設の比率除く)

農林水産省「園芸用施設の設置等の状況(R2)」

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