韓国農業は、データだけでは分からない事項が多くあります。特に、農村の動向や農業者の意見は、最終的には韓国の農業や農業技術を動かす要因になりえるので、把握しておいた方がよいと思います。
ここでは、23年5月15日付韓国農業新聞に掲載された「농막 불법 증축, 농장 사용 기준 만든다(農幕不法増築、農場使用基準をつくる)」の翻訳を通じ、帰農帰村者(日本の新規就農者・参入者とほぼ同義)の問題を読み解きます。
なお、「農幕」の詳細な定義は記事に書いていますが、2023年4月時点で適法な農幕のイメージをつかめる動画を下にリンクしておきます。併せてご参照ください。
記事の全訳
農食品部、農地法施行規則改訂
(韓国農業新聞=ヨン・スンウ記者)最近問題になっている「農幕」の不法増築や別荘としての使用など法に違反する事例を防止するため、農地法施行規則が改正される。
農幕は、農作業に直接必要な資材の保管、収穫した農作物の簡易な処理または農作業中にしばらくの間休息をとるために設置する施設(延べ面積20㎡以下)であり、居住できない施設である。
最近、監査院は、全国的な仮設建築物(農幕)設置および管理実態調査を実施し、「形態基準づくりなどの農幕設置要件の補完」が必要なことを農食品部に通報した。
農林畜産食品部(長官・鄭煌根정황근)は、監査院の監査により指摘された事項と、これまで自治体等が制度改善が必要だと建議してきた事項をもとに、農地法令の改正を推進することを明らかにした。
農地法上の農幕関連規定を明確に整備し、農幕の立法趣旨に沿うように活用されるようにする一方、自治体の農幕に対する事後管理の制度的限界を改善・補完するものである。
施行規則改定案では、農幕は田園住宅・別荘など居住目的に使用できないが、その基準が明確でないため自治体の事後管理が困難であることから、農幕での居住を判断できる具体的基準をつくった。
特に、消防基準が適用されない仮設建築物である農幕での居住は、火災などの事故に弱く、1家族2住宅の回避手段として活用されうる。
農幕に転入届を出したり、農作業中の「一時休息」を超える行為(夜間の就寝、宿泊、農作業を伴わない余暇施設での活用等)をする場合、または内部の休息空間が床面積の25%を超過すれば住居とみなし、農幕の立法趣旨に沿って活用できるようにした。
農幕を設置する時、農地に回復が可能な建築法上の仮設建築物として届け出るようにした。これにより、農幕を建築物として届け出て、農地が毀損したり恒久的に別荘等に使用することを防止する一方、仮設建築物として届け出された場合には3年ごとに不法増築等の違反事項を確認することにより、農地法上の周期的点検が可能になる。
農幕が不法に増築されるのを防止するため、建築法上は延べ面積の算定時には除外されるウッドデッキやテラスなどの付属施設は、農幕では延べ面積に含まれることを農地法令上で明記した。従前の業務便覧・指針・解釈事例などをもとに運営してきた延べ面積規定を、農地法令に具体的に規定し、現場業務に混乱をきたさないようにする措置である。
これとともに、小規模農地に別荘など事実上の居住目的で農幕を設置したり、大規模農地を細かく分割して居住用の違法農幕団地を形成することを予防するため、非農業者に限り農地面積による農幕面積基準をつくった。
一方、農食品部は、今回の農地法施行規則の改正内容とは別に、今年3月、最近農幕の設置が多い地域を対象に、自治体と合同で設置の実態を点検した。
その結果、点検対象全252個の農幕の中で、51%に相当する129個の農幕が、居住用として違法に増築されていたり、農作業をまともに行わずに庭園や駐車場などとして違法に活用されていることを確認した。
朴スジン農業政策官は、「この度の制度改善により、行き届かなかった農幕の規定を補完し、仮設建築物である農幕の事故を防止する一方、現場で事後管理に困難が生じないよう支援を強化するつもりだ」と明らかにした。
管理人の補足
韓国の帰農・帰村者への影響
韓国では、近年政府の政策として、帰農・帰村が積極的に推進されています。
都市から帰農・帰村する際に必要なのはまず住宅です。韓国の場合、縁故を頼って空き家を借りれることもありますが、例えば集落から離れた地区で農業を営む際には経営が安定するまでは「農幕」を一時の住居にすることもあるようです。
今回の改正により、韓国の各自治体も、帰農・帰村者に対する住宅をどう確保するかが問題になりそうな気がします。一方で、韓国は近年農地(特に水田)面積の減少が進んでいるため(下リンク)、今回の改正で農地を居住用の建物に無秩序に変えていく(≒農地が減っていく)のは防げそうです。
わが国の場合
わが国では、農地に建物を建てる場合、農地法上の許可(市街化調整区域≒行政が農地を残したいと考える区域)または届け出(市街化区域)が必要で、詳細な要件が定められています(分かりやすい説明を参考1にリンクしました)。
一方で、特に農地の持ち主と建物の持ち主が異なる場合はトラブルが起きやすく、農林水産省が留意点をまとめています(参考2)。
参考になれば幸いです。
出典
출처(出典) : 한국농업신문(韓国農業新聞ホーム) / 当該記事