【韓国農業技術の今が分かる】(時事ニュース23.02.15)デジタルツイン技術基盤「露地スマートファーム」分野を重点的に推進【新聞記事紹介】

ソウルの高層ビル 新聞記事신문기사
写真測量が不可欠な韓国の高層建築物(2019.08、ソウル)

最近は、農業関係のメディアで、スマート農業やドローンに関する記事を見ない日がないほど多くなりました。これは、韓国をはじめとする海外でもまったく同じ状況です。

また、星の数ほどあるスマート農業やドローン記事のうち、最近の状勢が要領よく分かる記事は正直なところ少ないですよね。

しかも、それが海外の情報となると、一段とハードルが高くなります。

そんなあなたに、とっておきの記事を紹介します。

それは、ビジネス一般に特化した韓国メディア「時事ニュース시사뉴스」2023年2月15日付記事「【2023隠れた企業特集⑧(株)空間情報 】デジタルツイン技術基盤「露地スマートファーム」分野を重点的に推進」で、同社代表の金ソック氏へのインタビューです。

記事の翻訳文を読むことで、特に韓国でのドローン技術開発の最新情報がたやすく理解できます。また、記事中の専門用語にはリンクを張り、(株)空間情報が事業転換を図った背景となる韓国の事情も、管理人が解説します。

記事には農業とは直接関係のない部分もありますが、何らかのお役に立てると思います。

  1. 韓国を代表するドローン製作、センシング等の企業として、(株)空間情報がある。
  2. 同社は、超分光・赤外線カメラセンサーをドローンに乗せて建築物の安全点検などを行う業務についても韓国随一である。
  3. 2022年に、同社は、韓国農村振興庁と「露地スマート農業拡散のための業務協約」を締結した。これは、農村振興庁が持つ、画像診断技術・精密水管理技術・病害虫予察技術のノウハウを(株)空間情報に移転することで、露地スマートファーム技術を開発する。これは、韓国農業が抱える異常気象・労働人口および農地の減少などの問題解決策を構築するためである。
  4. ドローンや人工衛星を活用した多段階の農作物観察技術開発を、カンボジア、ラオス、ミャンマーなどでも遂行しており、農作物の静止画像および3Dモデル構築、植生分析、AIを基盤とする作物種分類技法の開発などに取り組んでいる。

記事の全訳

・「テラセンス・モバイル」小規模地域に特化したサービス提供可能
・国立食糧科学院と露地デジタル農業分野発展のために業務契約締結
・露地スマートファームが、国内農業が直面する多様な問題解決策になること

[時事ニュース・洪ギョンイ記者] <時事ニュース>は小さくても強い企業(強小企業)を探し、彼らの生存、未来や実践戦略等に対し、企画特集シリーズ記事として2020年9月から2022年12月まで6回にわたり全130個あまりの隠れた企業を紹介したことがある。これらの企業を対象に、本誌は、異種企業間の情報交流、国内外投資の維持策、国策課題や自治体事業の受注、新技術認証、IPO推進、広報マーケティング戦略の樹立など、経営およびマーケティング戦略を総括するプラットフォームを構築し、企業の対外・未来競争力を高めさせるために、本誌が付設する「隠れた企業経営戦略研究所」を今年2月1日に公式に設立した。研究所の企業を2月と4月の2回にかけて特集として紹介する。<編集者注>

企業紹介をお願いします

(株)空間情報は、2001年に個人事業主として出発し、2006年度に法人に転換しました。地理情報・リモートセンシング・ドローン製作・写真測量技術を基盤に、国内外のデジタルツイン(Digital Twin)および3次元空間情報の構築、スマート農業、スマート建設分野を重点に事業展開しています。

主要な生産製品としては、回転翼や固定翼の国産ドローン製品と、超分光・赤外線カメラセンサーなどを搭載したドローンを利用して、スマートシティ、大型構造物の安全点検および精密分析業務を遂行しています。

創立以降の主要な実績を教えてください

弊社では、設立以降、GISリモートセンシング・ドローンのハードウェアおよびソフトウェア技術を基盤に、建設分野の国家研究課題を50件以上実施してきました。国内外の事業実績を認められ、2015年には大統領表彰を受賞し、2021年には国土交通部が主催した「スマート国土チャレンジ大会」に参加してスマート安全部門革新賞をいただきました。

現在は、国内100か所以上の主要公共機関および大企業といった顧客を対象に、ドローンシステムの販売と請負等の事業を活発に展開しています。

主要コンテンツや製品は何ですか?

弊社は、2014年からSenseFly、Micasense、Virtual surveyor、Bentleyなどのグローバル企業と手を組み、国内に多様な技術提携と製品の独占供給をしています。5年前からは、本格的に自社での研究開発を開始し、国産ドローン製品「Terra」など多様なドローン関連製品を自社ベースで生産しています。

特に、回転翼ドローンの場合は、2021年第16回VIP ASIA Awardsという行事で「2021年にアジアを輝かせたドローン」製品に選定されるという成果を導き出せました。今後、弊社では、建設および農業分野を中心に統合管制に特化した製品を持続的に上市し、国内だけでなく輸出にも注力するつもりです。また、垂直離着陸固定翼(VTOL)ドローン製品も上市し、国内の地形においても安全飛行することで地形情報の取得が手軽にできるよう開発しました。

特に、モバイル環境に適合するように開発した「テラセンス・モバイル」は、小規模地域に特化したサービス提供が可能です。

(株)空間情報・会社紹介(韓国語)

既存の類似した機能のコンテンツや製品と比較したときの特徴や長所は?

弊社では、4次産業先端技術を融合できるデジタルツイン構築、競争力がある人材、装備、そして製品や技術を保有しています。

主に実世界の産業インフラ施設、機械や装置、3次元地形情報等をデジタルデータに具現化し、スマート建設管理と災害シミュレーション、露地農作物遠隔制御技術、農作物の収穫量予測などに活用可能な製品です。

スマートファーム団地構築のためのデジタルツイン基盤の立地分析をはじめ、設計、運用計画を樹立し、自動灌水・排水施設のための基盤施工、各種センサーによるデータ収集、ドローン予察、防除を遠隔制御し、ビッグデータを分析する統合プラットフォームが弊社のキーテクノロジーです。

今後の事業発展戦略の計画を教えてください

露地デジタル農業技術に重点化

今後の事業戦略は、露地デジタル農業分野を中心に、段階別に推進計画を樹立し、会社のすべての経験と技術の力量を農業分野に集約させる計画です。

弊社は、露地スマートファームが、異常気象、労働人口および農地減少など国内の農業が直面する多様な問題解決策になりうることを認識しており、この分野の事業を重点的に推進しています。

弊社は、昨年5月18日に農村振興庁・国立食糧科学院と食糧分野のドローン技術の適用拡大のための協力体系構築を強化しました。これは、露地デジタル農業分野の共同研究および発展を試みるために、相互業務契約を締結したものです。昨年11月22日には、国立食糧科学院と露地スマートファーム関連の技術移転協約を締結し、本格的な露地スマートファーム事業を推進しています。

技術移転協約の締結により、農村振興庁は、空間情報、精密水管理技術、病害虫予察技術など、露地スマート農業関連の6種の特許技術をひとまとめにして移転し、露地スマートファーム技術開発のための支援・協力体系を構築しています。

(株)空間情報作成:4次産業革命時代に必要な未来農業に対する先端ICTと農業の融合(4차 산업혁명 시대에 필요한 미래 농업의 대안 첨단 ICT와 농업의 융합) feat ARC EZ Farm(韓国語)

農村振興庁を介した現地への技術移転

技術移転は、昨年5月に弊社が食糧科学院と結んだ「露地スマート農業拡散のための業務協約」の追加措置として、露地スマート農業技術の体系的かつ効率的な現地普及のために推進されました。

弊社は、無人機(ドローン)開発、映像撮影、3次元モデル化、精密農業に基盤を置いた無人機と人工衛星を活用したリモートセンシングによる露地作物収量予測サービス、AIが基盤となる農業データ構築など、国内外で多様な事業を推進するつもりです。

露地スマート農業は、所得の割に費用が多くかかることから、農業現場に適用するには困難な点があります。個別の1~2種類の技術では露地環境は制御しがたいことから、現場での活用に限界があったのです。この対策として、農村振興庁は、地中点滴灌水、デジタルトラップ、画像診断、統合管制システムなど、露地のスマート農業関連技術をひとつにまとめ、需要者の使用に便利になるように活用度と完成度を高めることができます。

海外への進出

農業事業のもう一つの軸としては、すなわち海外事業であります。弊社では、ここ10年間の農業分野の研究や事業実績をもとに、海外事業にも尽力しています。特に、ドローン、人工衛星を活用した多段階の農作物観察技術開発を、国内はもとより、カンボジア、ラオス、ミャンマーなどを中心に遂行してきており、農作物の画像処理を通じた静止画像および3Dモデル構築、植生分析、AIを基盤とする作物種分類技法の開発、営農現況の分析プラットフォーム開発等をしているところです。

弊社では、農業分野で開発された製品と技術をもとに海外事業に注力するつもりです。

翻訳文の補足説明

業態変更の背景は?

もともと、韓国は全GDPに占める公共投資の比率が主要国では最も高いことで知られており、例えば2000年~2010年までは全GDPの5%を公共事業が占めていました。

しかし、ここ10年で4%程度と減少しています。

となると、(株)空間情報が得意としてきた、公共事業着工前の写真測量や、既存インフラの点検といった業務需要は縮小することが明らかです。

そこで、同社が持つ強みを生かして新しく進出した分野が、露地スマート農業だったということになります。

日本で注視すべき点は?

個人的に注視が必要と考えるのが、やはり海外展開です。同社が進出しようとしているカンボジアやラオスなどは、同社が蓄積してきたような地図データが不足することは容易に想像できます。

にもかかわらず、果敢に進出しようとしているのは、ドローンのほか、衛星データ画像などをうまく利用することを前提にしていると考えられます。

さらに、上記の国々は、おそらく十分な予算もないのではと考えられます。それでも、将来のために技術を導入しようとするカンボジア等政府の姿勢は注目すべきです。

ゆえに、日本においても、似たようなプラットフォームを構築して、比較的安価に露地でのスマート農業開発に拍車をかけるべきと思います。

なお、日韓ともに、農業用ハウスに関するスマート農業技術の開発はかなり進んでいます(↓下リンク参照)。これからは、設備インフラが整っていない露地でのスマート農業技術開発がキーになります。

【韓国は隠れた農業用ハウス大国】日韓両国の農業用ハウス設置状況を整理して分かったこと4選【最新2020年統計反映】
2020年に両国で実施された調査結果をもとに、日韓両国の農業用ハウスの面積や所有農家数の推移を整理しました。 また、両国の農業用ハウスが農業上どのような位置づけであるかも整理しました

参考資料

출처(出典) : 시사뉴스(時事ニュースHP) / 当該記事

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