【所得は日韓ともに伸びている】韓国と日本の露地ブドウの経営指標・労働生産性の特徴6選を大紹介

日韓露地ブドウの金額ベースの労働生産性 果樹과수

ブドウは、日韓両国とも生産状況だけでなく、農家の経営状況を調査する重要品目にもなっています。

ブドウが、重要品目である理由は主に2つあります。

  1. 品種によっては高級なイメージもあるため、贈答用としても定番であること
  2. 粒の大きさが適切であるため、大人から子供まで幅広く食べられていること
【韓国はシャインマスカット導入以降好調】韓国と日本の施設ブドウの経営指標・労働生産性の特徴6選を大紹介【日本は変化なし】
韓国と日本の最新統計をもとに、両国の単位面積当たり施設ブドウ収量・単価・経営費・所得・労働時間の概況を整理してみました。また、韓国の「シャインマスカット」導入以前と以降の収益性を比較できるようにしました。

上記のうち、「1.」の部分は、主に施設ブドウが担っているので、上のリンクのようなまとめ記事を作成しました。

でも、上記のうち「2.」の部分を担う露地ブドウについては、収益性や労働生産性を日本と韓国で比較した資料はほとんどありません。

そこで、このページでは、韓国と日本の最新統計をもとに、両国の単位面積当たり露地ブドウの収量・単価・経営費・所得・労働時間の概況を整理してみました。2つの表と4つのグラフとを準備し、日韓両国の露地ブドウ経営が直感的に分かるようにしています。

特に下のリンクでも示したとおり、近年の韓国は「シャインマスカット」の栽培面積が激増しています。しかし、韓国の「シャインマスカット」導入以前と以降の収益性を比較した資料もない状況です。

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もともとのブドウの原産地は、夏場に雨が降らない地域であるので、排水対策を十分に行い、無理な早期出荷さえ狙わなければ、露地栽培も可能な品目です。

収穫直前の降雨が原因の裂果が比較的少ないのが「シャインマスカット」の長所です。

よって、「シャインマスカット」が露地栽培でどれだけ導入されているかも興味深い話ですが、それが分かる資料もないのが現状です。

日韓の露地ブドウの経営状況、とりわけ「シャインマスカット」導入以降の近年の動向に興味がある方は必見の内容です。

  1. 収量は韓国が高く、単価は日本が高い。よって粗収益ベースでみると、日韓には大きな差はない。
  2. 経営費は韓国が日本の60%程度と安いため、韓国が日本より所得が高い。
  3. 韓国の露地ブドウにかかる10a当たり労働時間は、日本の40%程度と非常に省力的である。
  4. 韓国施設ブドウの所得が日本を上回っているうえ、労働時間も日本の60%程度に過ぎないことから、自家労働1時間当たり所得も韓国が日本の2~2.5倍と高い。
  5. 韓国は、施設ブドウの労働1時間当たり収穫量が低下傾向であるが、それでも日本の2倍程度ある。
  6. 「シャインマスカット」導入以来、露地栽培の収益性が年ごとに上がっているのは日韓同様である。しかし、韓国は、露地栽培だけでなく、施設栽培も収益性が向上している。

日韓両国の露地ブドウ収量・単価・粗収益の比較

収量の比較

  • 収量は、19年~21年を通じて韓国が日本の1.3倍程度高いです。
  • また、データのばらつきの度合いを示す変動係数(%、標準偏差÷平均値×100)は、日韓とも低く、安定しています。

単価の比較

  • 単価は、19年は日本が韓国の1.7倍程度高かったものの、単価差は年々縮小し、2021年には1.3倍程度です。
  • 韓国の単価は年々上昇を続けており、2014年から21年の7年間で単価が2.5倍、2019年から21年の3年間で1.6倍に伸びています。
  • 日本の単価も、韓国ほどではありませんが、2019年から21年の3年間で1.3倍に伸びています。

粗収益の比較

  • 2019年の粗収益は、日本が韓国より10%程度高いです。
  • 2020年以降は、両国の粗収益はだいたい同等になっています。

日韓両国の露地ブドウ経営費・所得の比較

経営費の比較

  • 経営費は、韓国が日本の60%程度と安いです。
  • ただし、日韓両国とも、2019年→21年の3年間だけを見ると、経営費が20%程度上昇しています。

所得の比較

  • 2019年以降は、韓国の方が日本より所得が高く、年々差が拡大しています。直近のデータがある2021年では、韓国が日本より25万円/10a程度高くなっています。
  • また、韓国では、「シャインマスカット」が導入されていない2014年から、主要品種となった2021年の7年間で所得が2.1倍に伸びています。

日韓両国の施設ブドウ労働生産性の比較

韓国の露地ブドウ労働時間

  • 年によって多少のばらつきはありますが、韓国はどの年も250時間/10a以内に収まっています。
  • なお、労力のほとんどが自家労働力であり、雇用労働は多い年(2020年)でも全労働時間の20%程度です。

日本の露地ブドウ労働時間

  • 日本はどの年も400時間/10a程度で推移しています。
  • 韓国と同様に自家労力が主体です。雇用労力の導入は多い年でも全労働時間の20%程度と、韓国と同程度の水準です。

日韓の露地ブドウ栽培における自家労働1時間当たり所得比較

  • 韓国の10a当たり所得が日本より高めで、また労働時間は日本の60%程度に過ぎないことから、自家労働1時間当たり所得も韓国が日本の2~2.5倍と高いです。
  • 韓国の自家労働1時間当たり所得は年々伸びていて、2021年には3200円を記録しました。
  • また、「シャインマスカット」導入前で単価が非常に安い2014年でも、自家労働1時間当たり所得はおそらく日本より高いと思われます。

日韓の露地ブドウ栽培における労働1時間当たり収穫量比較

  • 韓国の労働1時間当たり収穫量は、日本の2.5倍程度あります。
  • 2014年の韓国は「シャインマスカット」が導入されてなく、「キャンベルアーリー」や「巨峰」が主体でした。この時期は、1時間の労働で何と9kg近い収穫物が得られていました。
  • 近年は、花穂整形や摘粒など、ブドウの房をきちんと作る方向にシフトしているのか、韓国の1時間の労働で得られる収穫量は減少傾向です。

補足

施設栽培との比較

  • 上で紹介した、施設栽培ブドウの場合、韓国のみが収益性が増大し続け、日本は横ばい傾向でした。
  • しかし、露地栽培を見ると、日韓とも、所得と自家労働1時間当たり所得は増え続けています。
  • 露地栽培の自家労働1時間当たり所得を国別にみると、韓国が1.6倍、日本が1.4倍と、物価上昇率を合わせ考えると、両国とも大差ない伸び率といえます。
  • このことから、韓国では露地・施設ともに「シャインマスカット」が増え、その影響で露地・施設ともに収益性も上がっていると思われます。
  • 半面、日本では施設栽培において「シャインマスカット」への転換がさほど進んでいないため、収益性が横ばいであると思われます。

露地栽培の有利性は?

  • 特に日本の場合、この2年は、露地栽培が施設栽培より単位自家労働時間当たりの所得が高くなっています。
  • すなわち、多くの労働時間を費やし、高額な投資が必要なハウスを導入しても、「時給」で見ると露地栽培に及ばないのです。
  • 推測ですが、日本の場合は、韓国よりさらに市場サイドの力が強く、特定の時期に集中出荷を防ぐために、作型の分散を産地が求められているのではないかと思われます。
  • また、他の品目の例ですが、韓国では日本よりも農産物が暴落したという話をよく聞きます(下リンク)。日本の場合は、暴落を防ぐための内部統制がしっかりしているのは長所と言えます。
【韓国農業事情の今が分かる】(韓国農業新聞23.05.24)タマネギ輸入が増え、ニンニク在庫があふれ・・・早急な需給対策が切実だ【新聞記事紹介・解説】
23年5月24日付韓国農業新聞に掲載された社説「タマネギ輸入が増え、ニンニク在庫があふれ・・・早急な需給対策が切実だ」の翻訳と解説を通じ、韓国青果物の流通構造の課題を読み解きます。

参考資料

韓国農村振興庁「2014年以降所得情報」(농촌진흥청「2014년이후소득정보」):当該ページを操作し2014年・2019年・2020年・2021年の全国(전국)の施設ブドウ(노지포도)に関する情報を抽出

農林水産省「農業経営統計調査>営農類型別経営統計」:令和元年、令和2年、令和3年

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