【韓国の農業技術が分かる】2022年 韓国農村振興庁 農業技術大賞 5選【その1:韓牛の飼料費・炭素低減型飼育技術】

牛舎にいる韓牛 技術一般기술일반
牛舎にいる韓牛(2019.05、河東郡)
農村振興庁作成動画「農食品副産物でつくる韓牛飼料で飼料費DOWN!! 品質はUP!!(농식품 부산물로 만든 한우 사료로 사료비 DOWN!! 품질은 UP!!)」

韓国でも、毎年数多くの農業に関する試験研究が実施され、成果が公表されています。

その中で、韓国の農業関係の試験研究を総括する政府組織である「農村振興庁」は、毎年「農業技術大賞」を選定していることは、日本人はもちろん、韓国人もあまり知らないようです。

韓国農村振興庁は、大賞について、「農業科学技術の開発および拡散を通じて農業者の所得増大、国民の生活条件向上等に寄与した研究者」に対して授与すると定めています。

このページでは、2022年に選定された5点の農業科学技術表彰大賞の中から、「韓牛の飼料費および炭素低減型飼育技術の開発・普及」について、その概要を翻訳してみました(※記述が重複している箇所は管理人で省略しています)。

大賞を受けた技術の内容や背景を把握することで、韓国政府が力点を置きたい農業政策もうかがえます。

韓牛飼料費および炭素低減型飼育技術の開発・普及

表彰区分:農業・協業

表彰者と所属:白ヨルチャン、李ヒョンジョン(韓牛研究所動物生理科)

成果の要約

農業・食品副産物を活用し、肥育期間を短縮する融合技術開発により、現場連携を促進:パイロット事業、政策事業に反映

※副産物活用:飼料費16%節減、所得36%向上

※肥育期間短縮:飼料費12%減少、所得34%増加

※成果創出:論文(SCI適合)6件、(非SCI)2件、営農技術21件、技術移転6件/投入19億

世界初の農業・食品副産物を活用し、農家単位でのTMR製造プログラム開発・普及および優良事例発掘・成果拡散

※情報電算プログラム開発5件、現場技術支援58件、コンサルティング297件、農家講義70件、広報成果975点

成果の内容

背景:国際飼料価格上昇により韓牛の長期肥育(31か月)に伴う飼料費および生産費増大

※韓牛(去勢)飼育期間: (’00) 23.0 → (’10) 30.9 → (’17) 31.1 → (’21) 30.4か月

※去勢牛1頭当たり飼料費: (’11) 193 → (’16) 288 → (’21) 348万ウォン/頭

※韓肉牛の腸内発酵による温室効果ガス・糞尿排出量: (’00) 4,651 → (’20) 5,099CO2eq

※農家生産において比重が大きい飼料費の節減および炭素排出量低減技術の開発・拡散が急務

中核となる成果

〇(副産物飼料化)精密飼料配合のための農業・食品副産物の飼料化技術開発

ー精密な飼料価値の評価システムを活用した副産物の栄養素消化率およびエネルギー価分析:22種

〇(情報サービス)世界初の農業・食品副産物活用のため分かりやすい農家別TMRプログラム開発・普及(http://nias.go.kr)

ー飼料の栄養成分と家畜の成長段階別の栄養素要求率を基盤に、農家で便利に自家飼料の配合比を作成できる「韓牛 飼養標準 飼料配合プログラム」開発

〇(肥育期間短縮)去勢韓牛の短期肥育(飼育期間:31.2→28か月)プログラムの開発・普及

ー3か月短縮しても韓牛の味、体重、肉質等級、肉生産量に差がない技術の開発

ープログラム:(育成期)TDN70%・ CP17%、(肥育前期) TDN76・CP16、(肥育後期) TDN80・ CP15

波及効果:韓牛農家の飼料費節減および国家単位のカーボンニュートラル対応への寄与

〇(現場実用化)農業・食品副産物を活用した飼料費節減および肥育期間短縮によるカーボンニュートラル実現

ー農業・食品副産物の飼料化、肥育期間短縮技術のパイロット事業および優良事例の成果拡散

ー農業・食品副産物を活用し、自家TMR作成(16~19年に185農家):前後飼料費16%減少(3,086→2,721千ウォン/頭)

ー肥育期間短縮技術の適用(20~21年に22農家):1786頭基準、飼料費12%減少、所得34%向上

ー肥育期間短縮(3か月)による1頭当たり炭素・環境負荷物質の排出低減効果:10.4%

ー政策事業(牛飼育方式改善、農食品部)反映(22年120億ウォン)および現場パイロット拡大推進(畜産院)

〇(経済的効果)国家単位での農業・食品副産物の処理費用節減および農家所得の増大

ー農家所得への効果:7,117億ウォン(161千ウォン/頭)、飼料原料の輸入代替効果:3,666億ウォン(副産物給与量:1.09トン/頭)

ー炭素税の節減効果:175億ウォン、環境処理費用の減少1,750億ウォン(処理費用124,472ウォン/トン)

〇(疎通協業)畜産院(副産物飼料化および短縮技術開発)、農食品部(政策事業化、制度改善)、環境部(制度改善)、自治体(パイロット事業化)、飼料会社(飼料の大量生産)、全国韓牛協会(共同教育)

補足

この研究自体は、少なくとも2016年頃から実施されてきたようです。

また、各産業においてカーボンニュートラル(韓国語では탄소중립、炭素中立)を図る技術の開発も、15年以上前から活発に行われています。

しかし、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻して以来、飼料価格は上昇の一途をたどっていることから、改めてこの研究が着目されたのではないかと考えられます。

以上のような背景から、カーボンニュートラルだけでは大賞受賞には届かなかったこの技術が、22年の飼料価格高騰によって受賞したのではないかと考えられます。

参考資料

2022年農業科学技術表彰大賞

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