ある農家の経営面積や販売額から、その農家の基本的な経営状況がかなりの程度分かります。
農家ごとの経営面積や販売額を国レベルで集計すると、その国の農業経営がどのような状況であるかをある程度把握することができます。
しかし、日韓両国の経営面積や販売額別の農家数について、同じ方法で整理して示したものはほとんどありません。また、ここ5年間の推移を示したものも見つかりません。
そこで、このページでは、日韓両国の経営面積や販売額別の農家数について整理して、直感的に分かるようにグラフで示しました。
また、直近の数字だけでなく、5年前の販売額別農家数についても整理し、両国の農業がどう変化しているかも整理しました。
- 経営耕地面積別に両国の農家数を比較すると、韓国では0.3ha以下の農家が多く、日本では1ha以上の農家が多い
- 韓国は販売額1~50万円の極めて小規模な販売農家が日本より多い。日本は、自給のみの農家と販売額1000万円以上の農家が韓国より多い。
- 韓国の農家は、2017年→2022年で8%減少、減少分の多くが50万円以下の販売額の農家だった
- 日本の農家は、2015年→2020年で23%減少、5000万円以上の農家数以外はすべて減少した
日韓両国の経営規模別農家数を整理してみた
- 直近の統計を見ると、韓国の農家数は53万戸(2022年現在)、日本の総農家数は103万戸です。
- 韓国に特に多いのが、経営面積が0.3ha以下の農家で、農家数の30%を占めており、日本の3%と比べると大幅に多いです。
- 逆に、日本では、経営面積が1ha以上の農家が農家数の50%を占めていますが、韓国では25%にとどまっています。
日韓両国の販売額別農家数を整理してみた
- 韓国に特に多いのが、販売額1~50万円以下の農家で、全農家数の37%を占めています。
- 日本では二極化が進んでおり、販売しない農家が全農家数の9%(韓国は4%)を占める半面、販売額1000万円以上の農家も11%(韓国は4%)います。
両国のここ5年の販売額別農家数を整理してみた
韓国(2017年と2022年の比較)
- 2017年→2022年の5年で、韓国の農家戸数は4万6千戸程度、率にして8%減少しました。
- 減少分のほとんどは、小規模農家(販売をしない農家や販売額が50万円以下の農家)です。
- 販売額1000~5000万円の農家が約2千戸増えているほかは、ほとんど変わっていません。
日本(2015年と2020年の比較)
- 2015年→2020年の5年で、日本の農家戸数は30万戸程度、率にして23%減少しました。
- 中でも減少幅が大きいのが、販売額が50万円以下の農家で、18万戸程度減少しています。
- 販売額5000万円以上の農家が約3千戸増えていますが、それ以下の販売金額の農家数は少しずつ減少しています。
まとめと補足
まとめ
- 経営耕地面積別に両国の農家数を比較すると、韓国では0.3ha以下の農家が多く、日本では1ha以上の農家が多い
- 韓国は販売額1~50万円の極めて小規模な販売農家が日本より多い。日本は、自給のみの農家と販売額1000万円以上の農家が韓国より多い。
- 韓国の農家は、2017年→2022年で8%減少、減少分の多くが50万円以下の販売額の農家だった
- 日本の農家は、2015年→2020年で23%減少、5000万円以上の農家数以外はすべて減少した
補足
もともと、韓国は日本よりも農地面積が少なく、また近年は水田面積が早いペースで減少しています。
【似ているけれど、違う】数字で見る日本と韓国の農地事情比較で分かった5項目
農業を論じる際には、農地の面積がどれくらいあるか分かっていると、話がスムーズに進みます。これは、農家単位や産地単位だけではなく、国単位でも言えることです。 でも、いざ調べようとすると、なかなかよい資料がないのが現状ですよね。 そこで、このペ...
そのような中、農家戸数がなかなか減らないという現象は興味深いです。
もっとも、農家戸数が減らないというのは、小規模農家が土地を手放さない → 大規模な農家が育ちにくいということになりやすいです。
実際、韓国の方が販売金額1000万円以上の農家が少ないのは、以上の背景もあると思われます。
個人的には、韓国の農家数減少幅のスピードが遅いのは、「都会に出た息子や娘に米・キムチ・野菜等を送ってあげる」習慣が日本より強く残っているからではと推測しています。
参考資料
韓国の経営耕地面積、販売額別農家数:大韓民国統計庁「農林漁業調査2022、2017」2023.05.13閲覧
日本の経営耕地面積、販売額別農家数:総務省統計局e-stat「農林業センサス Ⅴ総農家等 2経営耕地面積規模別農家数、4農産物販売金額規模別農家数」2023.05.13閲覧