2024年夏以降、コメの価格が急騰していて、筆者が住む地域のスーパーでも5kg袋で4000円を超えるのが当たり前になってきました。
こうなると、海外に出張に出かけた際に現地のコメを購入して日本に運んでくる方が経済的だという発想に行きつきます。
でも、コメをはじめとした植物の持ち込みには様々な規制が存在し、一筋縄ではいきません。
そこで、9か月ぶりに韓国に出張するのを機会に、手荷物としてコメを日本に正当な手続きを経て持ち込みましたので、その顛末を3記事に分けて書いておこうと思います。
第1弾は、制度の全般的な理解、特に日本側の関税や植物検疫法について説明した後、手ぶらで出かけて行って韓国当局から検査申請書用紙をもらう方法を紹介しました。

続く第2弾として、購入時の注意事項として店の立地や店頭での品質確認方法を紹介するとともに、韓国当局からもらった検査申請書用紙に記入する方法を説明します。
購入時の立地等
時間
滞在期間中いつ購入しても構いませんが、荷物になるので最終日の最後の日程にした方がよいでしょう。
できれば、購入したその足で空港や港に向かい、「携帯輸出植物検疫室(휴대수출식물검역실)」に向かった方がスマートです。
場所
今回は、釜山港発着の出張でしたので、釜山港に近いところを選びました。
スーパー自体もそこそこの大きさがあり、かつ歩いても15分ほどで港に行ける店として「トップマート草梁店(탑마트 초량점)」を選びました。
もちろん、それ以外の店で買っても問題ありません。私は、釜山で食品を買うときは、「ハナロマート チャガルチ店(하나로마트 자갈치점)」を使っていますが、ここからであれば、タクシーを使っても釜山港まで7000ウォン(700円強)程度で行けると思います。
店頭での品質確認方法
どんなコメを買うかは、人さまざまなので一般化しにくいです。
筆者の事例では、次の出張まで数か月ごと予想されていることから、白米だけでなく玄米も買っておこうと考えました。
白米は帰国後すぐに食べ始め、白米が尽きたあとに保存性に優れる玄米をコイン精米機などで精米するつもりです。
今回購入したコメ
以上の考えに基づいて、今回購入したコメは、以下の2種類です。

白米(コシヒカリ、京畿道産、10kg)

玄米(混合品種、有機栽培、全羅南道産、3kg)
品質表示票の読み方
2018年以来、韓国の穀物は以下の8項目は必ず記載する義務があります(2020年12月28日付農林畜産食品部政策資料)。
項目名 | 説明 | 備考 |
品目 (품목) | 穀物の品目または品名を表示 | すべての穀物 |
重量 (중량) | 穀物の実際の重量を表示 | 同上 |
生産者情報 (생산자 정보) | 生産者(加工・販売者)の住所、商号、電話番号 | 同上 |
原産地 (원산지) | 「農水産物の原産表示に関する法律」に従い表示 | 同上 |
品種 (품종) | 品種名を表示(不明な場合「混合」と表示) | 白米、玄米 |
生産年度 (생산년도) | 原料穀物の収穫年度を表示 | 同上 |
とう精年月日 (도정년월일) | もみ付き稲を玄米にとう精するか、もみ付き稲または玄米を白米にとう精した年月日を表示 | 同上 |
等級表示 (등급표시) | 等級基準に従いすべての等級を羅列した後、該当等級に「〇」表示 | うるち白米 (特級<특급>、上<상>、普通<보통>) |
たんぱく質含量 (단백질함량)※任意表示 | 基準に従いすべての等級を羅列した後、該当等級に「〇」表示 | 白米 (秀<수>、優<우>、未<미>) |
今回購入したコメが、これら項目を記載しているか、見てみたいと思います。
白米

項目名 | 説明 |
品目 (품목) | 白米 |
重量 (중량) | 10kg |
加工者(가공자) | 商号:チョアム農協米穀総合処理場 住所:京畿道華城市ウジョン邑ハンプリ1ギル49(電話・・・) |
原産地 (원산지) | 京畿道 |
品種 (품종) | コシヒカリ |
生産年度 (생산년도) | 別途表記 |
とう精年月日 (도정년월일) | 別途表記 |
等級表示 (등급표시) | 別途表記 |
生産年度、とう精年月日、等級表示は後で説明しますが、袋の他の部分に印字されていました。
玄米

項目名 | 説明 |
品目 (품목) | 玄米 |
重量 (중량) | 別途表記(欄外に「3kg」) |
生産者(생산자) | (個人情報保護のためマスキング) |
生産地 (생산지) | (個人情報保護のためマスキング) |
品種 (품종) | 混合 |
生産年度 (생산년도) | 2024年 |
とう精年月日 (도정년월일) | 2025.03.03 |
等級表示 (등급표시) | 記載なし |
玄米の方は、有機農産物(유기농)として認証されたものであり、生産者の認証番号(인증번호)やロット番号(롯트번호)が明記されていました。
下記のサイト「親環境認証管理情報システム(친환경인증관리 정보시스템)」で認証番号を入力すると、2019年にはじめて稲として認証され、12.2haを栽培していることや、今年度の生産計画量は84.7tであること、現地確認の結果2024年も有機農産物としての認証条件を満たすことなどが書かれています。
ただし、コメの等級表示は確認できませんでした。追加調査の必要はありますが、玄米であるため必須ではないためと考えられます。
韓国におけるコメの品質等級と日本との比較
2017年以降、韓国の米品質等級は以下のとおりに定められています。各項目ともパーセント表示であり、1項目でもこれ以上の数値になると等級が落ちることになっています(最高限度)。
等級 (등급) | 水分 (수분) | 小米 (싸라기) | 粉状質粒(분상질립) | 被害粒(피해립) | 裂損粒(열손립) | その他異物(기타이물) |
特(특) | 16.0 | 3.0 | 2.0 | 1.0 | 0.0 | 0.1 |
上(상) | 16.0 | 7.0 | 6.0 | 2.0 | 0.0 | 0.3 |
普通(보통) | 16.0 | 20.0 | 10.0 | 4.0 | 0.1 | 0.6 |
* その他異物中、「石、プラスチック、ガラス、鉄片」等の固形物は試料1kgを3反復調査の合計が1個以内であるとともに、「異種穀粒(籾含む)」は「特」と「上」は2個以下、「普通」は5個以下であること。
* 完全粒比率が96.0%以上の場合は、「特」表示とは別に「完全米(Head Rice)」と表示できる。
比較のため、日本の「水稲うるち玄米の品位(農産物規格規程第1の2の⑶のハの(ィ))」を示しておきます(各項目ともパーセント表示で、整粒率は最低限度、水分より右の項目は最高限度を示す)。
整粒 | 形質 | 水分 | 死米 | 着色粒 | 異種穀粒 | 異物 | 合計 | |
1等 | 70 | 1等標準品 | 15.0 | 7.0 | 0.1 | 0.4 | 0.2 | 15.0 |
2等 | 60 | 2等標準品 | 15.0 | 10.0 | 0.3 | 0.8 | 0.4 | 20.0 |
3等 | 45 | 3等標準品 | 15.0 | 20.0 | 0.7 | 1.7 | 0.6 | 30.0 |
2.整粒とは、被害粒、死米、未熟粒、異種穀粒及び異物を除いた粒をいう。
3.形質とは、皮部の厚薄、充実度、質の硬軟、粒ぞろい、粒形、光沢並びに肌ずれ、心白及び腹白の程度をいう。
4.水分とは、常圧加熱乾燥法のうち、105度乾燥法によるものをいう。
5.被害粒とは、損傷を受けた粒(発芽粒、病害粒、芽くされ粒、虫害粒、胴割粒、奇形粒、茶米、砕粒等)をいう。
6.死米とは、充実していない粉状質の粒(青死米及び白死米)をいう。
7.着色粒とは、粒面の全部又は一部が着色した粒及び赤米をいう。ただし、とう精によって除かれ、又は精米の品質及び精米歩合に著しい影響を及ぼさない程度のものを除く。
8.未熟粒とは、死米を除いた成熟していない粒をいう。
9.異種穀粒とは、その種類の玄米(もち玄米にあっては、玄米)を除いた他の穀粒をいう。
10.異物とは、穀粒を除いた他のものをいう。
比較が難しいのですが、韓国の小米と粉状質粒の合計値が日本の「死米」に該当するのであれば、韓国の方がやや基準が緩いと言えます。
反対に、異種穀粒や異物の許容基準は韓国の方が厳しく設定されていると言えます。
欄外記載が多い「とう精日(도정일)」も重要

白米での生産年・とう精年月日・等級表示
白米の包装面に黒字で印刷されている文字を読むと、以下が読み取れます。
生産年度 2024年産
とう精年月日 2025.02.17とう精
等級:特 (上) 普通
とう精年月日と購入日の間はなるべく開いていない方がよいですが、大規模乾燥調製施設で生産されていればこれくらいの間隔は開くのが当然なのかもしれません。
ともかく、いわゆる古米ではないこと、品質もそこそこのものであることは分かりました。
価格と韓国の付加価値税制度
レシート大公開

買ったコメを含むレシート
レシートでは、005と008がコメに関するものです。
有機栽培の玄米は、3キロ14800ウォン(kg当たり4900ウォン)もする高級品です。韓国では、有機農産物の価格は慣行農産物より20%程度高いのが常識になっています。
なので、コシヒカリの価格が10キロ39800ウォン(kg当たり3980ウォン)より20%高いというのは納得がいく数値であると言えます。
計19キロのコメを合わせると84200ウォン(購入期のレートで8600円程度)というのは、2025年3月時点では日本の半分程度であると言えます。
コメなどの農産物は「付加価値税」が課されない
ところで、今回は、コメ以外にもいろいろ買い物をしました。
商品001、005、008の下に「*」表示があるのは何を意味しているのでしょうか?
簡単に言うと、「付加価値税0%」を意味します。わが国で言うと、消費税に相当するものが無税であるという表示です。
コメ2種に加え、商品001のみそ(된장)も付加価値税が課されない一方、002~004の小豆粥(팥죽)、006の米から作った水あめ(쌀엿)、ロッテチョコパイ(롯데 초코파이)は10%の付加価値税が内税で課せられています。
理由を説明すると、韓国付加価値税法第27条第1号の規定に基づき、未加工の食品(穀類、野菜、果実、肉、魚、牛乳、キムチ、みそ、しょうゆ・・・)は免税であると規定されているからです。
それだけでなく、農林水産業だけに用いる各種資材(肥料、農薬、農業機械、軽油等)も付加価値税の課税対象にはなりません。ただし、それぞれの資材が韓国政府の検査や認証を経て登録されていることが前提条件となります。
検査申請書用紙の記入方法
必須の記入項目とその説明

輸出植物検疫申請書(記載要領)
一見難しそうですが、用紙に記載すべき項目は、赤枠囲いの部分だけですので、そこまで難しくありません。また、記載上の要点を書くと以下のとおりです。
- 基本的にすべて英語で書く。
- 氏名および住所は、個人旅行者の場合は同一でよい。
- 品目名、包装単位、数量は正確に書く。例えば、「Rice(白米)」について、10kg包装の商品と5kg包装の商品があった場合は、行を変えて記入する。その代わり、銘柄が全く異なる米を10kg2袋購入する場合は、別行に記載する必要はない。
- 「包装数と種類」は、申告する商品の包装数の合計を書く。例えば、白米10kg1袋+玄米3kg3袋であれば、「4」と記載する。
- ここでは省略したが、品目数が4アイテム以上になる場合は、同時に配布される追加記入用紙に書ききれなかった分を記載する。
以上、今回は、ハンドキャリーで韓国産米を持ち帰るための買い物や検疫申請書の書き方について説明しました。また、豆知識として、韓国のコメの品質等級や税制についても説明しました。
次回の「③手続き編」では、実際に買ったコメについて、釜山で検査を受け「輸出植物検査証明書」を発行、帰国時に必要な手続きについて説明します。お楽しみに。