農作物を生産するときには、肥料は欠かすことができない資材です。
というのは、ほとんどの農作物は光合成により水と二酸化炭素から同化養分(≒糖分)を生産できますが、植物の葉、根、花、果実をつくるには同化養分だけでは不足するからです。
同化養分だけでは不足する元素(下表参照)は、基本的には人間が施してやらねばならず、それは狭い意味での肥料になります。
植物が多量に必要とする元素 | 窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄 |
微量だが植物には不可欠の元素 | ホウ素、鉄、マンガン、亜鉛、モリブデン、塩素等 |
さらに、植物の生育に必須の元素ではないものの、生長に有用な元素もあります(ケイ素など)。
また、土の酸度を調整(石灰や硫黄など)したり、土を柔らかくする(堆肥など)など、必ずしも植物に吸収されないものの、植物の生育を助けてくれるものも広い意味での肥料になります。
以上のように、農作物の生産には欠かせない肥料は、各国とも生産や流通の方法を定めるルールが定められています。
このルールは、日本では「肥料の品質の確保等に関する法律(以下、肥料法)」、韓国では「肥料管理法(비료관리법)」と呼ばれています。
両国とも、国内では生産できない肥料資源も多いなど事情が似ているので、基本的には日本「肥料法」と韓国「肥料管理法」の仕組みは似ています。
しかし、法律を細かく見ていくと、日本「肥料法」と韓国「肥料管理法」では異なる点も散見されます。
肥料価格が世界的に高騰しており、肥料の国際流通がこれからも増えることを考えれば、日本「肥料法」と韓国「肥料管理法」の違いは、特に肥料の輸出入を考えている方はぜひ知っておくべき内容です。
このページを読むだけで、日韓両国の肥料関連法の大枠をつかむことができます。
なお、ここでは、法律の成文のみで判断しています。さらに詳しい内容はリンク先などをご覧ください。
- 日本の肥料法と韓国の肥料管理法は、①法の目的、②公定規格の設定、③流通停止や罰則規定が似通っている。
- しかし、韓国肥料管理法独特の概念として、①登録に必要な情報を試験研究する機関は国家が認定する、②韓国内で生産流通する肥料は登録が必要である、③肥料価格の高騰時には国家が介入できる、という点があげられる。
- 一方、日本の肥料法では、韓国肥料法にはない「登録外国生産事業者」や「国内管理人」があり、活用次第で外国肥料生産業者から優良な肥料を入手・販売できる機会がある。
日本と韓国の肥料関連法の共通点
目的がよく似ている
日本の「肥料法」と韓国の「肥料管理法」の第1条(目的)を比較すると以下のようになっています。
日本 | この法律は、肥料の生産等に関する規制を行うことにより、肥料の品質等を確保するとともに、その公正な取引と安全な施用を確保し、もつて農業生産力の維持増進に寄与するとともに、国民の健康の保護に資することを目的とする。 |
韓国 | 이 법은 비료의 품질을 보전하고 원활한 수급(需給)과 가격 안정을 통하여 농업생산력을 유지ㆍ증진시키며 농업환경을 보호함을 목적으로 한다.(この法は、肥料の品質を保全し、円滑な需給と価格安定を通じ、農業生産力を維持・増進させるとともに、農業環境を保護することを目的とする。) |
以上から、日韓両国の肥料関連法の目的は、①同国内で使用される肥料の品質を保証すること、②肥料の適正な取引について定めること、③農業生産力の維持・増進を図ること、の3つが共通していると言えます。
「公定規格」が定められている
日本の「肥料法」第3条と韓国の「肥料管理法」の第4条では、それぞれ「公定規格(공정규격)」を定めるように規定しています。
では、両国の肥料関連法が定める「公定規格」はどう定義されているのか見ていきましょう。
日本 | 第3条 農林水産大臣は、普通肥料につき、その種類ごとに、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める事項についての規格(以下「公定規格」という。)を定める。 一 含有すべき主成分の最小量、最大量、有害成分の最大量など 二 その原料の範囲を限定しなければ品質の確保が困難なもの 三 使用される原料 2 農林水産大臣は、公定規格を設定し、変更し、又は廃止しようとするときは、その期日の少なくとも三十日前までに、これを公告しなければならない。 |
韓国 | 제4조 ① 농림축산식품부장관은 공정규격의 설정ㆍ변경 또는 폐지(이하 이 조에서 “공정규격의 설정등”이라 한다)를 할 수 있다. (農林畜産食品部長官は、公定規格の設定、変更または廃止(以下、本条では公定規格の設定等という)ができる。) ② 공정규격의 설정등이 필요하다고 인정하는 자는 농림축산식품부령으로 정하는 바에 따라 농림축산식품부장관에게 공정규격의 설정등을 요청할 수 있다. (公定規格の設定等が必要と認める者は、農林畜産食品部令に定めるところに従い、農林畜産食品部長官に公定規格の設定等を要請できる。) ③ 공정규격의 설정등의 전문성 및 공정성을 높이기 위하여 필요한 경우에는 관계전문가 등의 의견을 들을 수 있다. (公定規格の設定等の専門性および公正性を高めるため、必要な場合は関係する専門家等の意見を聴取できる。) ④ 농림축산식품부장관은 공정규격의 설정등을 하려는 경우에는 30일 전에 고시하여야 한다. (農林畜産食品部長官は、公定規格の設定等をしようとする場合には、30日前には公示しなければならない。) ⑤ 제4항에 따른 공정규격 설정의 고시가 되지 아니한 비료를 생산ㆍ수입하여 농업용으로 판매하거나 무상으로 유통ㆍ공급하려는 자는 공정규격의 설정을 요청하여야 하며, 공정규격이 설정된 후가 아니면 이를 생산ㆍ수입하여 보관ㆍ진열ㆍ판매ㆍ유통하거나 공급할 수 없다. 다만, 시험용 또는 연구용의 경우에는 공정규격이 설정되지 아니한 비료를 생산ㆍ수입할 수 있다.(第4項に伴う公定規格設定の公示がない肥料を生産・輸入し、農業用として販売したり、無償で流通・供給しようとする者は、公定規格の設定を要請しなければならず、公定規格の設定後でなければ生産・輸入し、保管・陳列・販売・流通したり、供給してはならない。ただし、試験用または研究用の場合は、公定規格が設定されていない肥料を生産・輸入できる。) |
以上から、日韓両国の肥料関連法では、①国の農業行政の最高責任者は普通肥料の公定規格の設定・変更・廃止ができること、②政府には公定規格設定に先立つ30日前にはそれを明らかにすること、の2つが共通していると言えます。
反面、日本の「肥料法」では公定規格の条件として「肥料が供えるべき性能」に重点を置いて条文で示しているのに対し、韓国の「肥料管理法」では「どのような手続きで公定規格になるか」に重きを置いていることが見て取れます。
日本の場合にも、韓国のような新たに公定規格を定めるための手続きはきちんとあります。それは、肥料法第8条第3項で定める「仮登録」→第9条に定める「公定規格設定、肥料登録」という手続きを経ることが定められています。
国は違反した肥料の生産や流通を停止させる権限がある
日本の「肥料法」、韓国の「肥料管理法」とも、法に違反する肥料については、違反状態の是正を指示し、それでも守らなければ生産や流通を停止するように定めています。
まず、違反状態の是正を指示する条文を見ていきましょう。
日本 | 第二十二条の三 農林水産大臣は、<定められた表示事項>を表示せず、又は<定められた遵守事項>を遵守しない生産業者、輸入業者又は販売業者があるときは、当該生産業者、輸入業者又は販売業者に対して、表示事項を表示し、又は遵守事項を遵守すべき旨の指示をすることができる。 第三十条 農林水産大臣又は<知事>は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、生産業者<や輸入業者や販売業者が、肥料の保管・運送するために用いる場所>に立ち入り、肥料<やその原料等の>帳簿書類その他必要な物件を検査させ、関係者に質問させ、又は肥料若しくはその原料を、検査のため必要な最小量に限り、無償で収去させることができる。 |
韓国 | 제14조④ 농림축산식품부장관 또는 시장ㆍ군수ㆍ구청장은 비료의 보증 표시 및 판매 관리를 위하여 필요하다고 인정할 때에는 생산 또는 수입되어 양도ㆍ보관ㆍ진열ㆍ판매ㆍ유통되거나 공급되는 비료의 보증 표시 및 판매에 관한 사항을 확인ㆍ점검할 수 있다. (第14条④農林畜産食品部長官または<地方自治体の長>は、肥料の保証表示および販売管理のために必要であると認めたときは、生産または輸入され、譲渡・保管・陳列・流通されていたり供給される肥料の保証表示および販売に関する事項を確認・点検できる。) 제18조② 농림축산식품부장관 또는 시장ㆍ군수ㆍ구청장은 비료의 품질 관리를 위하여 필요하다고 인정할 때에는 생산 또는 수입하여 보관ㆍ진열ㆍ판매되거나 유통ㆍ공급되는 비료의 품질을 검사할 수 있다.(第18条②農林畜産食品部長官または<地方自治体の長>は、肥料の品質管理のために必要であると認めたときは、<生産・輸入・譲渡・保管・陳列・販売・流通・供給>される肥料の品質を検査できる。) |
条文の言い回しは日韓両国で多少違っていても、違反したような事案があれば、違反状態の是正を指示するか、検査等を通じて違反状態であることを知らせる(是正することを暗に期待している)ことで、是正を図ることがうたわれています。
上記にもかかわらず、違反状態が続く場合は、両国政府は生産や流通を停止できるようになっています。
日本 | 第三十一条 農林水産大臣は、生産業者又は輸入業者がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反したときは、次項の場合を除き、これらの者に対し、その違反に係る肥料の譲渡若しくは引渡しを制限し、若しくは禁止し、又は当該肥料の登録若しくは仮登録を取り消すことができる。 |
韓国 | 제19조 시장ㆍ군수ㆍ구청장은 제18조제2항에 따른 검사 결과 해당 비료가 다음 각 호의 어느 하나에 해당할 때에는 그 비료업자에게 그 판매중지ㆍ회수ㆍ폐기ㆍ양도금지, 그 밖에 필요한 조치를 명할 수 있다. 다만, 비료업자가 없을 경우에는 비료의 소유자에게 필요한 조치를 명할 수 있다. (第19条 <地方自治体の長>は、<検査の>結果、肥料が次の各号の一つでも該当したときは、その肥料業者に販売中止・回収・廃棄・譲渡禁止、その他必要な措置を命じることができる。ただし、販売業者がいない場合は、肥料の所有者に必要な措置を命じることができる。) 1.공정규격에 정하여진 주성분, 유해성분, 그 밖의 규격, 유통기한 등 그 밖의 사항 등을 위반한 비료(公定規格に定められた主成分、有害成分、その他の規格、流通期限などその他の事項に違反した肥料) 2.공정규격이 설정되지 아니한 비료(公定規格が設定されていない肥料) 3.제14조제1항에 따른 보증성분량(중량을 포함한다)과 실제 함유성분량(含有成分量)의 차이가 농림축산식품부령으로 정하는 기준에 맞지 아니한 비료(<中略>保証成分量(重量含む)と実際の含有成分量の差が農林畜産食品部令で定めた基準と異なる肥料) 5.제11조에 따라 등록하거나 제12조에 따라 신고한 제조 원료 외의 물질을 사용하여 제조한 비료(<中略>登録または届出した製造原料以外の物質を使用して製造した肥料) |
違反時に科せられる罰則の重さがほとんど同じである
日本の「肥料法」、韓国の「肥料管理法」とも、法に違反する行為を行ったものに対しては刑事罰を科することができます。
刑事罰の重さごとに具体的な違法行為を見ていきましょう(主な事項のみを抜粋・要約しています。正確な条文はリンクからご確認をお願いします)。
3年以下の懲役(罰金:日本では100万円以下、韓国では3000万ウォン≒330万円以下)
日本 | 第36条 ①登録若しくは仮登録を受けないで、普通肥料を業として生産するか輸入した者 ②不正な方法で登録や仮登録を受けた者 ③保証票に虚偽の記載をした者 ④保証票を不正に使用するか保証票に紛らわしいものを自己の販売する肥料の包装に付した者 |
韓国 | 제27조(第27条) ①공정규격 설정의 고시가 되지 아니한 비료를 생산ㆍ수입하여 농업용으로 판매하거나 무상으로 유통ㆍ공급하려는 자(公定規格設定の告示がない肥料を生産・輸入し、農業用として販売したり、無償で流通・供給した者) ②등록을 하지 아니하고 비료를 생산하여 판매하거나 무상으로 유통ㆍ공급한 자(登録していない肥料を生産・輸入し、販売するか無償で流通・供給した者) ③거짓이나 그 밖의 부정한 방법으로 제11조에 따른 등록을 하거나 제12조제1항에 따른 신고를 한 자(虚偽その他不正な方法で第11条による生産業者登録をするか、第12条第1項による輸入業者の届出をした者) ④보증 표시를 거짓으로 기재한 자(保証表示に虚偽の記載をした者) ⑤공정규격에 정하여진 유해성분 최대함유량을 초과한 비료를 양도ㆍ보관ㆍ진열ㆍ판매ㆍ유통하거나 공급한 자(公定規格に定められた有害成分の最大含有量を超過した肥料を譲渡・保管・陳列・流通するか供給した者) ⑥제19조에 따른 비료의 판매중지ㆍ회수ㆍ폐기 등의 명령을 위반한 자(第19条に伴い地方自治体長がした肥料の販売中止・回収・廃棄等の命令に違反した者) |
日本:1年以下の懲役・50万円以下の罰金、韓国:2年以下の懲役・2000万ウォン≒220万円以下の罰金
日本 | 第37条 ①指定混合肥料の生産業者・輸入業者の届出をせずに事業を開始するか、虚偽の届出をした者 ②農業協同組合等が生産する事業場の所在地を管轄する都道府県知事に届出をせずに事業を開始するか、虚偽の届出をした者 ③他の業者の氏名や商標を騙るか、他の肥料の名称若しくは成分を表示して販売した者 |
韓国 | 제28조(第28条) ①보증 표시를 하지 아니하거나 같은 항 단서에 따른 보증표를 발급하지 아니한 자(保証表示をしないか、バラ売り販売をする際に保証票を発給しない者) ②제14조 제2항제1호ㆍ제2호 및 제4호부터 제7호까지의 규정을 위반한 자(保証表示が毀損され判別できない肥料、効果に誤解を与える表示をした肥料、公定規格以外の原料を使用した肥料、生産業者登録や輸入業者の届出をしないで肥料を販売する者) |
日本:50万円以下の罰金、韓国:500万ウォン≒55万円以下の過料
日本 | 第38条 ①登録又は仮登録を受けた者が、氏名・住所・生産事業場の名称か所在地・保管施設の所在地などを変更したにもかかわらず、届出をしなかったか虚偽の届出をした者 ②登録又は仮登録を受けた肥料の名称を変更したのにもかかわらず、書換交付申請をしなかったか虚偽の申請をした者 ③登録又は仮登録を受けた肥料が失効したにもかかわらず、執行の届出をしなかったか虚偽の届出をした者 ④保証票に法で定められた以外の事項を記載したか、虚偽記載を行った者 |
韓国 | 제29조(第29条) ①비료의 유통 및 보관 등에 관한 관리기준을 준수하지 아니한 자(肥料の流通および保管等に関する管理基準を遵守しない者) ②단위 면적당 연간 최대 비료 공급량ㆍ사용량을 초과하여 비료를 공급ㆍ사용한 자(単位面積当たり年間最大供給量・使用量を超過して肥料を供給・使用した者) ③비료업자, 비료를 공급하는 농업협동조합중앙회, 비료의 운송업자 또는 창고업자가 보고를 하지 아니하거나 거짓으로 보고한 자(肥料業者、肥料を供給する農業協同組合中央会、肥料運送業者または倉庫業者において、法で定められた報告をしないか虚偽報告をした者) |
日本:30万円以下の罰金、韓国:200万ウォン≒22万円以下の過料
日本 | 第39条 ①登録証や仮登録証を主たる事務所に備え付けていなかった者(生産場に登録証や仮登録証の写しを備え付けていない者も含む) ②登録証や仮登録証を紛失・汚損したのにも関わらず、再交付申請をしなかった者 ③肥料を生産・輸入したときに、名称・数量・原料等を記入する帳簿を備え付けず、記載をせず、又は虚偽の記載をした者 |
韓国 | 제30조(第30条) ①비료생산업이나 수입업으로서 등록한 사항을 변경 또는 폐업・휴업 신고를 하지 아니한 자(肥料生産業者または輸入業者として登録した事項を変更したり廃業・休業した場合に、申告をしなかった者) ②비료생산업으로서 영업의 승계 신고를 하지 아니한 자(肥料生産業者として営業承継の届出ををしなかった者) ③비료의 가격을 표시하지 아니하거나 거짓으로 표시한 자(肥料の価格を表示しないか、虚偽表示をした者):この項のみ100万ウォン以下の過料 |
以上をまとめると、以下のことが整理できます。
- 両国とも、無登録の肥料または虚偽で肥料登録を受けたことが分かった場合は、3年以下の懲役が科せられる。
- 両国とも、事業者や肥料名の変更などの手続き漏れは、罰金ないし過料が科せられる。
- 全体的にみると、韓国の方が罰則が厳しく、また違反行為を具体的に示している印象がある。
- 日本では肥料業者に対する罰則のみであるが、韓国では関連する事業者(例:肥料使用者、倉庫業者等)も罰則の対象となる。
- 韓国では、肥料の年間最大使用量を超過したり、価格を虚偽表示したりした場合にも過料の対象となる。
日本と韓国の肥料関連法の主な違い
韓国は、肥料登録に必要な試験を行う試験研究機関を定めている
日本・韓国ともに、肥料登録をする際には、法に定められた必要な試験(保証成分や有害成分の分析、植物に害を及ぼさないことを証明する栽培試験)を行うことが定められています。
日本の場合、登録に必要な試験の方法は詳細に定められているものの、その方法に沿って行う限り試験者は誰であっても構わないとされています。
しかしながら、韓国の「肥料管理法」では、以下の規定により、農林畜産食品部長官が肥料登録に必要な試験研究を行う機関を指定するのが日本との大きな違いです。
以上の手続きを経て、指定された試験研究機関の一部を以下に例示しておきます。
- 株式会社パンコリア(주식회사 판코리아):肥料の有効成分・有害成分・その他成分、床土の有効成分・有害成分・その他成分
- 慶尚国立大学校・農業生命科学研究院(경상국립대학교・농업생명과학연구원):理化学分析、微生物分析、植物栽培試験
- 第一分析センター(株)(제일분석센타㈜):肥料全般
- 親環境農産物安全性センター(친환경농산물안전성센터):肥料の理化学分析、有害成分分析
また、韓国農村振興庁によると、韓国肥料法に対応して何らかの項目の肥料を分析ができる試験研究機関は全54か所が指定されており、韓国の民間企業のほか、大学や道立農業研究院などもリストに入っています(下リンク)。
韓国は基本的にすべての肥料について登録を取る必要がある
日本の場合、「普通肥料」については肥料登録を受けた後でないと生産や輸入できないことが明記されていますが(肥料法第4条)、同時に「特殊肥料」の場合は以下を満たせば事業開始の1週間前までに届出をすればよいことになっています(同法第22条)。
- 氏名及び住所(法人にあつてはその名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)
- 肥料の種類及び名称
- 生産業者にあつては生産する事業場の名称及び所在地
- 保管する施設の所在地
一方、韓国の肥料管理法第11条によると、以下の条項があり、基本的にはすべて登録を受けなければならないと明記されています。
では、登録が除外される「大統領令で定める規模以下の副産物肥料」とは何なのでしょう。
1日平均1.5トンとすると、年間で約500トン生産できることになります。それだけ聞くとものすごい量ですが、例えばこれが肥料成分が入った堆肥であると考えると少し話が違ってきます。
というのは、堆肥は年間10a当たり2~3トン入れなければ地力が維持できないとされているからです。仮に10a当たり2.5トン必要としても、年間20ha分しか生産できないことになります。
そう考えると、きわめて規模の大きな農家であれば、1戸分、露地野菜を栽培する普通の専業農家であっても3~5戸分に過ぎず、韓国で商業的に肥料を生産するのには登録がいると考えてよいです。
韓国は、肥料が不足した時に対応できる条文がある
これまで見たように、韓国の肥料管理法には、「円滑な需給と価格安定」、「単位面積当たり年間最大使用量を超過して肥料を使用した者は過料」、「肥料の価格を表示しないか虚偽表示をした者は過料」と定められています。
これらのことから、韓国の肥料管理法は、「なるべく多くの農家に肥料を適正に使用させる」ことを意図している側面が日本の肥料法より強いと言えます。それが最も明確に表れている条文が、以下に示す第7条です。
この条文を読めば、何らかの非常事態が起きて肥料の供給ができなくなった場合、民間事業者ではなく自治体や農協などの公的な機関を動かして、ともかく肥料の供給を続けるという韓国政府の意思を感じることができます。
一方、日本の場合は、現行の肥料法にはそのような規定はありません。
ただし、ロシアとウクライナの戦争を受けて世界的にに肥料価格が上昇している昨今、政府は「肥料は特定重要物資であり、原料のひっ迫が生じた場合にあっても、肥料の国内生産を継続し得る体制を構築したい」と考えており、制度化もしたいようです。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keizai_anzen_hosyohousei/r4_dai4/siryou1.pdf日本は、海外肥料会社が指定する「国内管理人」を設置できる
一方、韓国の肥料管理法にはなく、日本の肥料法にはある概念もあります。
それが、海外から肥料を輸入する場合の、国内管理人です。まず条文(法第33条の二)から見ていきましょう。
国内管理人が、具体的にどのようなことをするのかについては、以下のように定められています。
このように、日本の肥料法には、①登録肥料を国内生産した事業者(生産業者)、②登録肥料を輸入した事業者(輸入業者)、③①と②が得た肥料を国内で購入して第3者に販売する事業者(販売業者)のほかに、
- ④登録外国生産事業者(登録肥料を生産するが、国内に生産・輸入する拠点がない業者)
- ⑤国内管理人(登録外国生産事業者の日本国内での肥料法の業務に従事する代理人)
に分けられていると整理できます。
すなわち、例えば韓国の肥料生産業者が日本国内で自社製品を販売するときは、④になり、⑤を選任する(日本の肥料法には国内管理人としての資格を特に定めていない)ことで、③と契約すれば販売できる仕組みになっています。
一方、韓国の肥料管理法では、上記の①~③は法で定められていますが、④登録外国生産事業者や、⑤国内管理人という概念自体が存在しません。
よって、日本の肥料生産業者が韓国で肥料ビジネスをしようとする場合は、②輸入業者(韓国では届出で可能)を探して契約、輸入業者が③の販売者に販売するという形でしかできないということになります。
以上のように、日本の肥料法は、一定の条件で外国の肥料業者が参入できることになっていますが、それだけ制度が複雑になっているということにもなっているのです。
まとめ
- 日本の肥料法と韓国の肥料管理法は、①法の目的、②公定規格の設定、③流通停止や罰則規定の手順や量刑が似通っている。
- しかし、韓国肥料管理法独特の概念として、①登録に必要な情報を試験研究する機関は国家が認定する、②韓国内で生産流通する肥料は登録が必要である、③肥料価格の高騰時には国家が介入できる、という点があげられる。
- 一方、日本の肥料法では、韓国肥料法にはない「登録外国生産事業者」や「国内管理人」があり、活用次第で外国肥料生産業者から優良な肥料を入手・販売できる機会がある。