2024年夏以降、コメの価格が急騰していて、筆者が住む地域のスーパーでも5kg袋で4000円を超えるのが当たり前になってきました。
こうなると、海外に出張に出かけた際に現地のコメを購入して日本に運んでくる方が経済的だという発想に行きつきます。
でも、コメをはじめとした植物の持ち込みには様々な規制が存在し、一筋縄ではいきません。
そこで、9か月ぶりに韓国に出張するのを機会に、手荷物としてコメを日本に正当な手続きを経て持ち込みましたので、その顛末を3記事に分けて書いておこうと思います。
その1弾として、制度の全般的な理解、特に日本側でコメの流入を規制する2つの制度(関税、植物検疫法)について説明した後、手ぶらで出かけて行って韓国当局から検査申請書用紙をもらう方法を説明します。
外国産米の流入を規制する2つの制度
関税等の規定
農林水産省のサイトには、コメの輸入について解説したページが存在します。
そして、そこには、個人用(輸入者や家族の食用、お土産用)の場合は、
過去1年間の輸入数量が100kg以下 ⇒ 届出を行うことにより納付金及び関税が免除されます。
と明記されています。
なので、これだけを見ると、「その辺で適当に買って、そのまま持って帰ればいいや」という誤解が生じやすいです。
植物防疫法の規定
しかし、実際には、もう一つの規制として「植物防疫法」があるので、旅行者の手荷物といえども正規な手続きを経なければなりません。同法の第6条には、以下のような条文があり、検査証明書がないと輸入してはならないことになっています。
(輸入の制限)
第六条 輸入する植物(栽培の用に供しない植物であつて、検疫有害動植物が付着するおそれが少ないものとして農林水産省令で定めるものを除く。以下この項及び次項において同じ。)又は指定物品(検疫有害動植物が付着するおそれがあるものとして農林水産省令で定めるものに限る。以下この章において「検疫指定物品」という。)及びこれらの容器包装は、輸出国の政府機関により発行され、かつ、その検査の結果検疫有害動植物が付着していないことを確かめ、又は信ずる旨を記載した検査証明書又はその写しを添付してあるものでなければ、輸入してはならない。
(以下略)
難しく書いていますが、要は「日本政府が定める植物や地域からは病害虫を伝染させる可能性がある植物を輸入してはならず、輸入には現地国の証明書が必要」ということです。
そして、韓国から持ち込むコメについても、「検査証明書及び入国時の検査が必要です」と明記されています。
韓国からの例ではありませんが、外国から持ち込んだコメを廃棄させられた記事も目にします。

上の場合、タイ産ではなく、日本からタイに正規輸出されたコメを逆輸入しようとした例ですが、それでも「法は法なので」と言われてその場で廃棄という憂き目にあっています。
結局コメ輸入はどうすればできるかの整理
以上を整理して表にまとめたのが以下になります。
植物検疫法 / 関税 | 1人年間100キロ以内 | 1人年間100キロ以上 |
検査証明書あり | 関税免除で輸入できる | 100キロを超えた分からは、多額の関税等が賦課 |
検査証明書なし | 帰国時に廃棄させられる | 帰国時に廃棄させられる |
日韓両国の植物防疫法の規制をクリアするには
植物検疫法第6条に定められた輸入制限は、「国際植物防疫条約(IPPC)」に基づいて実施されています。
日本や韓国をはじめ世界187か国が加盟しており、事務処理の方法がある程度統一されているようです。
韓国で実施すべき事項
まず、韓国政府が示す「輸出植物検疫申請書(수출식물 검역신청서 Application for inspection of plants exporting、以下写真)」を入手します。

輸出植物検疫申請書(수출식물 검역신청서)
現品を購入した後、上の申請書に必要事項を記入し、空港や港に設置されている「携帯輸出植物検疫室(휴대수출식물검역실)」に行き、原品と一緒に提出します。
ここで問題がなければ、以下のような「輸出植物検査証明書(수출식물검사증명서、Phytosanitary Certificate)」が発行されるので、大切に保管しておきます。

輸出植物検査証明書(수출식물검사증명서)
以上の手続きにかかる時間は、事前に申請書に記入して訪問したこともあり、今回は15分くらいでした。
ただし、日本に住む韓国人コミュニティ向けの記事によると、金浦空港内の同種の施設では30分ほど時間がかかると書いているので、少し余裕を持った方がよいかもしれません。

日本で実施すべき事項
飛行機や船が到着すると、まず入国審査が行われます。
入国審査の終了後、普通の人はそのまま手荷物検査場(税関)の検査を受けますが、入国審査場と手荷物検査場の間に実は「植物検疫カウンター」があります。
ここで現品、「検査証明書(Phytosanitary Certificate)」、「米穀の届け出に関する届出書(その場で書いてもよい)」、パスポートを提出して問題がないことが認められると、原品に1袋ずつ「植物等検査合格証印」(下写真、直径3センチ程度)が張られ、「届出書」の写し(下写真)をくれます。
なお、今回は、カウンターにいた時間は5分程度でした。
これらの書類があるものだけが税関検査を通過できるようになっているのです。

植物等検査合格証印

米穀の輸入に関する届出書
余談ですが、日本から外国に米を輸出する場合も、「検査証明書」が必要になります。
ただし、2025年3月現在、台湾、香港、シンガポール、EU26、英国、米国、カナダ、チリ、ニュージーランドは、「植物検疫証明書無しで輸出できます」と表示されています。
また、韓国の場合、郵送と手荷物は検疫証明書なしで輸出可能ですが、商用貨物は検疫証明書が必要とされています。

韓国植物検疫当局から検査証明書をもらうための準備
以上の流れ自体は理解していましたが、「輸出植物検疫申請書」様式の入手方法が分からないまま入国しました。
そこで、釜山港に着くとその足で総合案内に行き、「日本に帰るときに韓国産米の植物防疫証明書が欲しい」旨相談しました。
すると、数か所に電話をかけてくれた結果、「10分ほどお待ちください。担当者が来るはずです」とされ、5分後に植物検疫官が本当に来られたのでした。
以下、植物検疫官とのやりとりです(実際は韓国語でしています)。

コメはどれくらい買って帰られるのですか?

20キロくらいと思います

となると、当然ハンドキャリー(Hand Carry)ですよね?

今回はそのつもりです

では、「輸出植物検疫申請書」の用紙を差し上げますので、当日現物と一緒にお渡しください。
ただし、日本語では書かないでください。
検疫室は駐車場横の通関場横に設置していますので、午後であれば3時から3時半までにお越しください。

英語は苦手なので、韓国語でも大丈夫ですか?
また、検疫室ではどれくらい時間がかかるのでしょうか?

商業用であれば原則英語ですが、個人の旅行者の場合は韓国語でも十分です。
書類さえ問題なければ、コメの場合10分くらいで終わります。
今後アップする「③実際の手続き偏」で詳しく説明しますが、申請書を直接もらうのは少しイレギュラーな対応だったようです。
以上、今回は、韓国産米をハンドキャリーで持ち帰るのに必要な関税や植物検疫法令について説明しました。また、用紙がない場合の入手例も紹介しました。
次回の「②購入と申請書作成編」では、実際に買ったコメについて、釜山での店舗の選び方や、値段や等級の見方を説明しようと思います。お楽しみに。
