近年、韓国ではブドウ栽培が熱いです。特にわが国でも人気のある「シャインマスカット」の面積が急増しています。
この記事では、韓国のブドウについて、2013年以降の品種ごとの栽培面積の推移を整理することで、品種の動向を解説します。
- 韓国は日本に近いブドウ栽培面積がある
- 韓国は、10年前から6年前までブドウ栽培面積が急減していた
- しかし、韓国は19年以降栽培面積が回復しつつあり、「シャインマスカット」の効果が大きい
- ここ数年の「シャインマスカット」の面積の伸びは、日本が2倍程度であるのに対し、韓国は13倍と爆増している
韓国と日本の全栽培面積
日韓両国のブドウの全栽培面積を整理してみました。
2013年は日韓とも17000ha(ヘクタール)程度ありました。
日本の場合、面積の減少が緩やかで、この8年間で年間100haずつ減少、計900ha程度の減少にとどまっています。
しかし、韓国の場合、13年→18年の5年間で4000ha以上が減少しており、日本より急激に減少していることが分かります。
また、韓国の場合、18~19年を底に、面積が持ち直しており、18年と21年を比べると500ha程度面積が増加しています。
韓国ブドウの主要品種は?
韓国のブドウ栽培は、栽培しやすく、収量が多い「キャンベルアーリー」主体に発展してきました。2016年では、全栽培面積の60%以上を「キャンベルアーリー」が占めてきました。
ところが、わずか5年後の2021年では、「キャンベルアーリー」の栽培面積が半分に減少した半面、「シャインマスカット」が13倍に急増していることが分かります。
一方、日本のブドウ栽培は、「その他」の品種が韓国より多いことから、様々な品種が栽培されていることが分かります。
また、面積の減少幅が一番大きな品種は「巨峰」であり、4年で25%減少しています。
そして、「シャインマスカット」も増加してはいるものの、4年で2倍程度であり、韓国よりも伸び率が低いことが分かります。
韓国の「シャインマスカット」栽培面積急増とその背景は?
「シャインマスカット」は、国の研究機関である農研機構が2006年に登録したブドウ品種です。「シャインマスカット」は登録直後から期待が高く、登録2年後の2008年には早くも56haに達していました。
しかし、輸出を想定していなかったので、海外での品種登録が行われず、2008年には中国に苗木が流出したとされています。
一方、日本での品種登録から6年がたった2012年頃から韓国でも栽培が始まり、2016年から統計資料に掲載されはじめました。2021年現在、韓国では4000haを超え、日本の栽培面積よりも多くなっています。
さらに、中国では50000haを超えると推定されています。
以上の「シャインマスカット」の例は、日本の育種のレベルの高さを示すと同時に、品種保護の大切さを示していると言えます。
また、日本より「シャインマスカット」の導入が遅い韓国での面積の伸びが非常に高いのは、日韓両国の国民性などを考える良い事例になりうると思います。
参考資料
韓国のブドウ栽培面積(2013~19):大韓民国農村振興庁「農業技術道しるべ」ブドウp56(2020)
韓国のブドウ栽培面積(2020):『農機資材新聞』「2021年主要作物栽培面積変化推定」21.02.01
韓国のブドウ栽培面積(2021):『農機資材新聞』「2022年主要作物栽培面積変化推定」22.02.01
日本のブドウ栽培面積(全体):『果物ナビ』「ぶどう」「栽培面積・収穫高の推移」23.05.01閲覧
日本のブドウ栽培面積(2017年までの主要品種別):『食品データ館』「【品種別】ブドウの栽培面積ランキング/シェア」23.05.01閲覧
「シャインマスカット」の品種特性、登録年度:農研機構育成品種紹介ページ、23.05.05閲覧
「シャインマスカット」穂木の中国への流出:農林水産省「国内育成品種の海外への流出状況について」23.05.05閲覧
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